第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
ハーマイオニーの言葉は、他の生徒たちも口にしていた。
皆、優しくて面白いリーマスを心配していて、アリアネはそれが少し嬉しくてついつい笑みを浮かべてしまう。
それから5分後。
カンカンに怒り狂っているロンが追いついてきた。
「聞いてくれよ。あの×××」
「ロン!」
ロンはとても人に言えないような言葉を発したので、ハーマイオニーはギョッとしながら叫んだ。
だがそれを気にせずにロンはまたとんでもない事を口にした。
「×××が僕に何をさせると思う?医務室のおまるを磨かせられるんだ。魔法なしだぜ!ブラックがスネイプの研究室に隠れててくれたらなぁ。な?そしたらスネイプを始末してくれたかもしれないよ!」
「ロン!言い過ぎよ!」
ギロリとアリアネはロンの事を睨みつけた。
その睨みにロンは肩を竦めながらも、『だってさ……』とブツブツと呟くのだった。
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翌日。
アリアネは朝早くから学校の廊下を歩いていた。
雷の音のせいで早くに起きてしまい、まだ朝食時間ではないからと散歩をしていたのだ。
「酷い雨。でも、やるんでしょうね……クィディッチ」
雨は大粒であり横殴りに降っている。
雷も時折鳴っていて、酷い嵐のような状態だ。
「ハリー、怪我しなかったらいいんだけど」
ボソリと呟き、外を眺めながら歩いていた時だった。
「アリアネじゃないか!」
「……セドリック!」
後ろから名前を呼ばれて振り返れば、そこには相変わらずの爽やかな笑みを浮かべているセドリックがいた。
彼は早歩きで彼女の元に寄ると、嬉しげに微笑む。
「最近会ってなかったけど、元気だったかい?」
「もちろん、元気よ。セドリックは?」
「僕も元気さ。それに今日は元気でいなくちゃね、クィディッチの試合日だ」
「そういえば、貴方も出るのだったわね」
「応援してくれるかい?」
「私、今日の敵になるグリフィンドール寮よ?」
「それでもいいさ。君に応援してもらえたら、頑張れるからね」
「そう?じゃあ、頑張ってね、セドリック。でも試合の時は私はハリーを応援するけれど」
「それは少し妬けるな」
セドリックは小さく微笑むと、アリアネの髪の毛を一束掬い上げてから口付けた。
その所作は流れるように、そして紳士的。