第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
「もしかして、亡くなったとか言ったから慰めてくれているの?優しいわね」
アリアネは小さく微笑みながら、ふわふわとしているその毛並みを撫でた。
手のひらに伝わるその感触に目を細めながら、自身から頬を擦り寄せる。
最近は教師達やパーシーの監視で、アリアネは心身ともに疲れていた。
そう、全てはシリウス・ブラックのせいで。
「シリウス・ブラックのせいね……」
ぼそりと呟いた瞬間、黒犬が躰を跳ねさせた。
「あら、もしかして貴方も知っているの?シリウス・ブラックを。貴方も会ったら気をつけるのよ。相手は肖像画も傷付けるんですもの」
「くぅん……」
「さて、まだ貴方を撫でていたけれどそろそろ戻らないと」
アリアネは立ち上がってから、黒犬の頭を撫でた。
「また、会えたらね。黒犬さん」
そう言うと、黒犬はまるで言葉を理解したように吠えてから森の方へと消え去った。
「賢いけれど……あの子、本当にどうやってここまで来たのかしら。ダイアゴン横丁からは距離があるような気がするのに」
不思議に思いながらもアリアネは建物内に戻った。
そして次の授業があるクラスへと向かっていれば、ハリーの後ろ姿を見つけた。
何処が憤っているような、そんな様子にアリアネは首を傾げる。
「ハリー!」
「あ……アリアネ」
「どうしたのよ。そんなに怒った顔して……」
「実はさ、クィディッチの試合相手が変わったんだ」
「変わった?何処と?スリザリンじゃなかったの?」
「フリントが、シーカーの腕がまだ治ってないからって言い出して、相手がハッフルパフになったんだ!」
「それって嘘じゃない!マルフォイの腕ならとっくに治ってるはずよ!」
話を聞いたアリアネも憤った。
マルフォイの腕はもう完治しているはずだというのにと、怒っていればハリーは『僕もそう思ったんだ』と息を吐き出す。
「理由は知れてるよ。こんな天気じゃプレイしたくないんだろうって、ウッドが言ってたよ」
「ああ……最近、雨だものね。でも、そうね……相手がハッフルパフか」
「今までスリザリンを対戦相手を想定して練習してたからね……やりづらくなるよ。ハッフルパフはスタイルが違うらしくてさ。あそこはキャプテンが新しくなったらしいから……誰だったけ?そう、セドリック・ディゴリー」
「セドリック・ディゴリー!?」