第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
「わしは吸魂鬼達に会いに行かねばならん。捜索が終わったら知らせると言ってあるのでな」
「先生、吸魂鬼は手伝おうとは言わなかったのですか?」
「おお、言ったとも」
ダンブルドアの声がやけに冷ややかだった。
「わしが校長職にあるかぎり、吸魂鬼はこの城の敷居は跨せん」
そう言い終えるとダンブルドアは足早に、そっと皆を起こさないように大広間を出ていった。
そして話し声が聞こえなくなり大広間は静けさが訪れる。
ちらりとアリアネはスネイプへと視線を向けた。
彼は憤懣やるかたない表情を浮かべながら、ダンブルドアを見届けていたが、やがて彼も大広間を出ていった。
そしてポソリとロンが呟いた。
「いったい何のことだろう」
❈*❈*❈*❈*❈*❈
シリウス・ブラックがホグワーツに侵入して数日経っても、学校中彼の話題で持ちきりだった。
どうやって城に侵入したのだろうという、尾ひれがついた話題ばかり。
「見事にシリウス・ブラックの話題ね」
アリアネはそう呟きながら、呆れたように目の前にあるグリフィンドール寮に繋がる肖像画をハリー達と見ていた。
「決闘だ!!」
切り刻まれてしまった『太った婦人』の肖像画は剥がされてから、代わりにずんぐりむっくりの『カドガン卿』がグリフィンドール塔に繋がる入口に貼られた。
そんな彼に皆は大いに頭を悩ませている。
かドカン卿は誰彼構わずに決闘を挑んだり、とんでもなく複雑な言葉を合言葉にしたり、1日に2回も合言葉を変えたりしたのだ。
「あの人、超狂ってるよ」
「ほかに人はいないの?」
寮生の言葉にパーシーは頭を横に振った。
「どの絵もこの仕事を嫌ったんでね。『太った婦人』にあんなことがあったから、みんな怖がって、名乗り出る勇気があったのはカドガン卿だけだったんだ」
アリアネとハリーの頭を悩ませているのは、カドガン卿だけじゃなかった。
教師達が2人を監視しはじめたのである。
教師達は何かと理由をつけては、アリアネとハリーと一緒に廊下を歩いていたのだ。
そしてパーシーに関しては、アリアネとハリーの行くところにどこにでもぴったりとついてきた。
「パーシー、鬱陶しいわよ!」
そしてついにアリアネはキレてしまった。
「そんなに着いて来なくていいわよ!トイレまで着いてくるつもりなの!?」