第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
「何をもたもたしてるんだ?全員合言葉を忘れたわけじゃないだろう。ちょっと通してくれ。僕は首席だ」
パーシーが訪れるとざわざわとしていた空間に沈黙が流れ始める。
暫くするとパーシーの鋭い叫び声が響いた。
「誰か、ダンブルドア先生を呼んで。急いで」
その言葉にざわつきが戻ってくる。
すると後からやってきたジニーが『どうしたの?』と顔を覗かせた。
するといつの間にかダンブルドアがそこにいた。
ダンブルドアはさっと、肖像画の方へと歩き出して、生徒たちが道を作る。
その時、アリアネは肖像画の有様を見て口を手で覆い、ハーマイオニーが悲鳴に近い声をあげた。
「ああ、なんてこと……」
「肖像画が……!」
『太った婦人』は肖像画から消え去っていて、絵は滅多切りにされていた。
キャンバスの切れ端は地面に散乱していて、酷い状態になっている。
ダンブルドアはじっと、無惨な姿となっている絵を見つめていた。
しばらくすると、マクゴナガルにリーマス、スネイプがダンブルドアの元に駆け寄ってきた。
「『婦人』を探さなければならん。マクゴナガル先生。すぐにフィルチさんのところに行って、城中の絵の中を探すよう言ってくださらんか」
その時、突然甲高くしわがれた声が響いた。
「見つかったらお慰み!」
ピーブズが、ひょこひょこと皆の頭の上を漂いながらこちらがわにやってきた。
そしてピーブズの言葉にダンブルドアは目をゆっくりと細める。
「ピーブズ、どういうことかね?」
「校長閣下、恥ずかしかったのですよ。見られたくなかったのですよ。あの女はズタズタでしたよ。5階の風景画の中を走ってゆくのを見ました。木にぶつからないようにしながら走ってゆきました。ひどく泣き叫びながらね」
ピーブズは嬉しげに笑いながら『おかわいそうに』と白々しく言う。
「『婦人』は誰がやったか話したかね?」
「ええ、たしかに。校長閣下。そいつは『婦人』が入れてやらないんで酷く怒っていましたねぇ」
勿体ぶるピーブズはくるりと宙返りしてから、ニヤリとその瞳をハリーとアリアネに向けた。
そして自分の足の間からダンブルドアを見てニヤニヤとする。
「あいつは癇癪持ちだからねえ。あのシリウス・ブラックは」