第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
その時だった。
クルックシャンクスはハーマイオニーの膝から飛ぶと、ロンのカバンに飛びついたのである。
そして4本脚の全ての爪でカバンを猛烈に引っ掻き始めた。
「クルックシャンクス!?」
「おい!はなせ!この野郎!」
「あらあら、クルックシャンクス、辞めなさい」
「アリアネ!呑気に言ってないでその猫を引き離してくれ!」
「ロン、乱暴しないで!」
騒ぎのせいで談話室にいた生徒たちが、アリアネたちの方へと視線を向けた。
ロンはカバンを振り回すけれど、クルックシャンクスは離れようとしない。
すると、『ホー!』というフクロウの鳴き声が聞こえた。
その声はアリアネのフクロウのジークの声であり、ジークは勢いよくロンのカバンを嘴で突きはじめる。
「ジークまでもかよ!!やめろよ!!」
「ジーク!?こら、ジーク!辞めなさい!!」
ロンが勢いよく鞄を振るった瞬間、中からスキャバーズが飛び出した。
そんなスキャバーズを、クルックシャンクスとジークは追いかけはじめる。
「その猫と梟を捕まえろ!」
ジョージがクルックシャンクスを、フレッドがジークを捕まえようと手を伸ばしたが取り逃す。
スキャバーズは整理箪笥の中に隠れ、クルックシャンクスはその前で停止してから前脚を下に入れて激しく引っ掻く。
ジークは嘴で箪笥を突きあげた。
「ジーク!辞めなさい、スキャバーズは餌じゃないのよ!」
「クルックシャンクスも辞めなさい!」
ハーマイオニーはクルックシャンクスを抱えると、箪笥から離れた。
ジークはというと、アリアネに叱られると大人しくなって彼女の肩に止まる。
そしてロンは腹這いになって、てこずりながらもスキャバーズの尻尾を掴んで引っ張り出した。
「見ろよ!こんな骨と皮になって!その猫と梟をスキャバーズに近づけるな!」
「クルックシャンクスにはそれが悪いことだって分からないのよ!ロン、猫はネズミを追っかけるもんだわ!」
「梟も、ネズミを餌にしたりするから追いかけちゃうのかも……」
「そのケダモノ達、何かおかしいぜ!」
スキャバーズはバタバタと激しく動いていて、ロンはそんなスキャバーズをなだめながらポケットに入れようとした。
「スキャバーズは僕のカバンの中だって言ったのを、そいつら聞いたんだ!」