第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
まだ、どんな姿にするか思いついていない私は慌てた。
だけど、皆は頷いて腕まくりしていて準備万端な体制。
「ネビル、私たちは下がっていよう。君に場所を空けてあげよう。いいね?次の生徒は前に出るように私が声をかけるから……?みんな下がって、さあ、ネビルが間違いなくやっつけれるように」
私たちはリーマスに言われた通りに下がっていき、壁にぴったりと張り付く。
ネビルはというと、緊張なのか恐怖のせいなのか顔を真っ青にさせながらもローブの袖をたくしあげて杖を構えている。
「ネビル、3つ数えてからだ」
リーマスが自分の杖を洋箪笥の取っ手へと向ける。
「いーち、にー、さん、それ!」
リーマスの杖から火花がほとばしり、取っ手へとぶつかると洋箪笥が勢いよく開く。
その中からはセブが現れて、鋭い目付きでネビルを見下ろしていた。
「リ、リ、リディクラス!」
上擦った声でネビルが叫んだ途端、セブは躓いて姿が変わっていく。
ハゲタカの帽子に緑色のドレスを身にまとい、深紅のハンドバッグを持っていた。
セブは女性の姿をしている。
その瞬間、周りからドッと笑いが溢れ出して、セブもといボガードは途方に暮れたように立ち止まる。
するとリーマスが大きな声で叫んだ。
「パーバディ、前へ!」
パーバディが前に出ると、ボガードはセブから血まみれの包帯を巻いたミイラ男になる。
「リディクラス!」
包帯が1本解けて、ミイラはそれに足を絡ませて転けてしまう。
「シェーマス!」
シェーマスが前に出ると、ミイラが姿を変える。
床まで届く黒い長髪に骸骨のような緑色がかかった顔の女、バンシーだった。
バンシーはこの世と思えない叫び声をあげて、私は身の毛がよだつ。
「リディクラス!」
バンシーの声が枯れて、その姿はネズミへと変わる。
するとネズミが次はガラガラヘビに変わったり、血走った目玉に変わったりとおかしくなってきた。
「混乱してきたぞ!もうすぐだ!ディーン!」
ディーンが前に出ると目玉は切断された手首になり、裏返しになって蟹のように床を這う。
「リディクラス!」
手は現れたネズミ捕りに挟まれた。
「いいぞ!ロン、次だ!」
ロンが前に出た瞬間、女子生徒の悲鳴が轟く。
何せボガードは毛むくじゃらの2m近くはある大蜘蛛になったからである。
その姿に私とハリーとロンは凍りついた。