第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
リーマスは柔らかい微笑みを浮かべながら、ネビルの顔を覗き込んでいた。
「教えてくれないか。おばあさんはいつも、どんな服を着ていらっしゃるかな?」
「えーと……いっつもおんなじ帽子。たかーくて、てっぺんにハゲタカの剥製がついているの。それに、ながーいドレス……たいてい、緑色……それと、ときどき狐の毛皮の襟巻きしてる」
「ハンドバッグは?」
「おっきな赤いやつ」
「よし、それじゃ。ネビル、その服装を、はっきり思い浮かべることができるかか?心の目で、見えるかな?」
「はい」
ネビルは少しだけ自信なさげに答えた。
一体、何故、ネビルのおばあさんの服装を聞いたのだろうかと皆は不思議そうな表情を浮かべている。
「ネビル、まね妖怪(ボガード)が洋箪笥からウワーッと出てくるね、そして、君を見るね。そうすると、スネイプ先生の姿に変身するんだ。そしたら、君は杖を上げて、こうだの、そして叫ぶんだ。『リディクラス(ばかばかしい)』。そして、君のおばあさんの服装に精神を集中させる。すべてうまくいけば、ボガード・スネイプ先生はてっぺんにハゲタカのついた帽子をかぶって、緑のドレスを着て、赤いハンドバックを持った姿になってしまう」
皆はその姿のセブを思い浮かべたのだろう。
途端に大爆笑して、笑いが止まらなくなってしまった。
私も勿論、ハゲタカの帽子をかぶって緑色のドレスを着たセブを思い浮かべて爆笑してしまう。
もしこの場にセブがいたら、どんな表情を浮かべるのだろうかと思ってしまった。
「ネビルが首尾よくやっつけたらそのあと、まね妖怪は次々に君たちに向かってくるだろう。皆、ちょっと考えてくれるかい。何が1番怖いかって。そして、その姿をどつやったらおかしな姿に変えれるか、想像してみて……」
私が思い浮かんだ姿。
それはやはり吸魂鬼だったが、違うのが思い浮かんだしまった。
リドル、トム・リドルだった。
またの名をヴォルデモート卿であり、私はあの秘密の部屋で彼を怖いと思った。
だけどやっぱり怖かったのは吸魂鬼だ。
(黒いマントの下にスルスルと消えた手。表情が見えない顔に、腐ったような手……)
思い出しただけでも怖い。
そう思いながら周りを見れば、生徒のほとんどが目をつぶっていた。
皆、何が怖いのかを考えているようだ。
「みんな、いいかい?」