第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「つまり、始めっから私たちのほうがまね妖怪より大変有利な立場にありますが、ハリー、なぜだかわかるかな?」
「えーと、僕たち、人数がたくさんいるので、まね妖怪はどんな姿に変身すればいいがかわからない?」
「そのとおり」
リーマスはハリーの回答に満足したように笑みを浮かべて、何度か頷いてみせた。
「まね妖怪(ボガート)退治をするべきときは、誰かと一緒にいるのが1番いい。向こうが混乱するからね。首のない死体に変身するべきか、人肉を食らうナメクジになるべきか?私はまね妖怪がまさにその過ちを犯したのを1度見たことがある。1度に2人を脅そうとしてね、半身ナメクジに変身したんだ。どうみても恐ろしいとは言えなかった」
皆はそれを想像してみたのだろう。
所々でクスクスと笑う声が聞こえて、私も苦笑を浮かべながらその姿を想像してみた。
確かに想像してみても恐ろしいとは思えない。
「まね妖怪を退散させる呪文は簡単だ。しかし精神力が必要だ。こいつを本当にやっつけるのは笑いなんだ。君たちは、まね妖怪に、君たちが滑稽だと思える姿をとらせる必要がある。初めは杖なしで練習しよう。私に続いて言ってみて……リディクラス(ばかばかしい)!」
「「「「リディクラス(ばかばかしい)!」」」」
「そう。とっても上手ぁ。でもここまでは簡単なんだけどね。呪文だけでは十分じゃないんだよ。そこで、ネビル、君の登場だ」
名前を呼ばれたネビルは驚いたのか少し跳ねた。
すると洋箪笥がガタガタ揺れ出して、ネビルまでも揺れ出す。
「よーし、ネビル。ひとつずつ行こうか。君が世界一怖いものはなんだい?」
ネビルは唇を動かすけれども、怖さのせいなのか声が全く出ていない。
「ん?ごめん、ネビル、聞こえなかった」
「スネイプ先生」
どっと笑いが起こる。
私もついつい笑ってしまうけれど、あのセブが怖いなだなんてと思ってしまった。
でもあれだけネビルに意地悪したりするのだから、怖がっても仕方ないと笑ってしまう。
皆が笑っている中で、ネビルも申し訳なさそうニヤッと笑っていた。
だけどリーマスは真面目な顔を浮かべている。
「スネイプ先生か……フーム……ネビル、君はおばあさんと暮らしているね?」
「え、はい。でも僕、まね妖怪がばあちゃんに変身するのもいやです」
「いや、いや、そういう意味じゃないんだよ」