第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
ハリーはかぼちゃジュースの入った瓶を私に渡してくれながら、心配そうに呟いた。
「心配してくれてありがとう。マダム・ポンフリーの薬のおかげで元気になったわ。それより、ハリーとロンは不機嫌そうだけどどうしたの?」
私はかぼちゃジュースを1口飲みながら、不機嫌そうにしている2人を見た。
何かに怒っているかのような表情である。
「マルフォイが、ハグリッドをクビにしようとしてるかもしれないんだ」
「なんですって……!?」
「父親伝に魔法省とかに掛け合ってるとか言ったんだ。汚い奴だ、自分が悪いというのに」
「今度会ったら殴ってやるわ……マルフォイのやつ」
「本気でしそうだね。辞めときなよ……ルーピン先生に怒られんじゃないかい?」
「それは嫌ね……」
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午後の授業は『闇の魔術に対する防衛術』だった。
私たちがそのクラスに行った時には、まだリーマスの姿はなかった。
「リーマス、まだ来てないわね」
「だから、君はそんなにキョロキョロとルーピン先生を探すんじゃないよ。これを見たらフレッドがヤキモチ妬く」
「なんでよ」
私たちがは教科書と羽根ペンに羊皮紙を取り出してから、リーマスが来るまでお喋りをしていた。
暫くすると、リーマスがやっと教室に入ってきてから曖昧に微笑む。
「やあ、みんな。教科書はカバンに戻してもらおうかな。今日は実地練習をすることにしよう。杖だけあればいいよ」
リーマスの言葉に、全員が教科書を直していく。
だけど初めての実地という言葉に何人かは怪訝そうにしていた。
今まで『闇の魔術に対する防衛術』で実地練習なんてしたことがないから。
「よし、それじゃ、私についておいで」
私たちは立ち上がってからリーマスを追いかけた。
誰もいない廊下を通ってから、角を曲がった時に、そこにはピーブズの姿があった。
ピーブズは手近の鍵穴にチューインガムを詰め込んでいたが、リーマスを見ると急に歌い出す。
「るーに、ルーピ、ルーピン。バーカ、マヌケ、ルーピン。ルーニー、ルーピ、ルーピン」
私はイラッとしていたけれど、リーマスは相変わらずの微笑みを浮かべているだけだった。
「ピーブズ、私なら鍵穴からガムをはがしておくけどね。フィルチさんがほうきを取りに入れなくなるじゃないか」