第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
マダム・ポンフリーの言葉に合わせて、私はゆっくりと目を閉ざした。
薬のせいなのか、直ぐに眠気がやってきて私はゆったりとした眠りについた。
『シリウス。またアリアネを抱っこしているのね。ハリーの事も抱っこした離さなかったってリリーから聞いたわ』
『だって可愛いからな、2人とも。2人とも可愛くて離すことができない』
『そろそろ、私にも抱っこさせてくれないかい?シリウス。私の名付け子なんだよ』
『いいだろう、リーマス。お前は昨日も抱っこしたんだろう?』
優しくて穏やかな夢。
そしてまた『シリウス』が出てくる夢だった。
顔はよく見えない、霞んでしまっているからどんな人なのか分からない。
『アリアネ、君は本当に可愛いな』
『そればっかり言ってるね、君は』
『ウィリアスの言う通り、アリアネは綺麗な子になるはずだ。ヘレンにそっくりなんだからな。この子とハリーの将来が楽しみだ。なあ、リーマス』
『そうだね。楽しみだ、ハリーとこの子がどんな大人になっていくのかが……』
夢の途中で、誰かに頭を撫でられた気がした。
その感覚が徐々に夢から私を覚ましていき、ゆっくりと私は微睡みの中から目を覚ます。
重たい瞼を開ければ、誰かに頭を撫でられていた。
「ああ、目が覚めたかい?アリアネ」
「りー、ます……」
「体調はどうかな?」
目の前にはリーマスの顔があった。
彼は心配そうにしながら、私の顔を覗き込んでいた。
そして私は腹痛がなくなっている事に気が付き、薬が効いたようだと思いながらリーマスを見る。
「もう、平気よ。薬が効いたみたい」
「それは良かった」
「リーマスは、なんでここに?」
「マダム・ポンフリーが教えてくれたんだ。彼女はダンブルドアから私が君の名付け親だと聞いていたようでね」
「そうだったのね……」
リーマスはずっと私の頭を撫でてくれた。
「リーマス、また夢を見たの」
「夢?」
「穏やかで優しい夢なの。そこで、貴方と『シリウス』って人が出てくるの。ねえ、リーマス。私の夢に出てくる『シリウス』はシリウス・ブラックなのかしら?前にアーサーおじさんに『シリウス』について聞いたら、凄く焦ったのよ」
「……それは分からないな、私にも。だが、あまりその名前を出さない方がいいよ?皆、シリウス・ブラックだと思ってしまうから」