第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
マダム・ポンフリーは『まあ、本当に顔色が悪い』と言ってベッドに寝かせるようにフレッドに言った。
そしてフレッドは優しく私をベッドに座らせてくれる。
「もしかして、女の子の日かしら?」
マダム・ポンフリーはこっそりと耳打ちをしてくれて、私は小さく頷いた。
「薬を出しましょう」
そう言いながらマダム・ポンフリーは何処かへと行ってしまい、私は腹痛に眉を寄せてお腹を撫でていた。
「こういう時って、腹を温めるといいんだよな」
「え?そうね……」
「一応ママから聞いてるんだよ。アリアネやジニーの為に覚えておきなさいってな。ちょっと失礼するぜ」
フレッドはベッドに乗ると、私を後ろから抱える。
そして手のひらを私の腹部に当てながら撫でてくれた。
驚いた私は見を固くさせていたけれど、フレッドはそれを気にせずにいる。
「ふ、フレッド……!?」
「腹部を温めると良いって聞いたんだよな。それに昔、パパがママにしてるのを見たんだよ、こうして温めてるのを」
背中越しにフレッドの体温を感じて、私は顔を少し赤くさせながら俯いた。
フレッドの大きな手がお腹を撫でる度に、じわりと暖かいものが伝わる。
心地よい。
そう思いながら、私はフレッドに背中を預けながら目を閉ざした。
「マダム・ポンフリーの薬なら直ぐに効くだろうから、もう少しの辛抱だ、アリアネ」
「うん……ありがとう」
「どういたしまして。お礼はキスでいいさ」
「嫌よ」
暫くすると足音が聞こえてきて、フレッドは体を離してから丸椅子に腰掛けた。
流石にあの状態をマダム・ポンフリーに見られたら、フレッドは追い出されてしまう。
「薬を飲みなさい。そして暖かい食事を取って、しばらく休むといいでしょう」
「ありがとうございます……」
「Mr.ウィーズリーはもう行っても構いませんよ」
「えー」
「えーではありません。休まなせないといけないのに、人がいると休めないでしょう!さあ、出ていった!」
「じゃあ、ゆっくり休めよアリアネ」
「ありがとう、フレッド」
フレッドはマダム・ポンフリーに追い出されてしまい、私はその背中を見送りながら薬を飲んだ。
そしてマダム・ポンフリーが持ってきたスープを飲んでから、ベッドに横になった。
「少し眠るといいですよ。おやすみなさい」