第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
ちらりとフレッドを見れば、彼は心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「顔色悪いな……。大丈夫か?アリアネ」
「ん……」
「今からマダム・ポンフリー呼ぼうと思ってたのよ」
「呼ぶより、医務室に運んだ方が良いだろう。俺が運ぶよ」
そういうなり、フレッドは私を軽々と抱き上げてしまい、それを見ていたパーバディが『きゃ!』と黄色い悲鳴を上げていた。
私はフレッドにしがみつく余裕もなくて、身を委ねる形で抱き抱えられて目を閉じる。
フレッドはハーマイオニーに肖像画を開けてもらうように言ってから、慎重に穴から出た。
途中で視線が集まったけれど、フレッドはそれを気にせずに歩く。
「ありがとう……フレッド」
「気にするなよ、辛いなら無理に喋らなくていいぜ」
「うん……」
「揺れるけれど、辛くない?平気?」
「平気……」
逆にフレッドの体温が暖かくて、それが体を温めるようで少しだけ楽な気分になる。
「ウィーズリー。何をしているのかね」
すると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
フレッドはその声が聞こえた瞬間、『うげぇ』と言っていて、目を開ければ目の前にセブがいた。
「Ms.フリートを抱えてどこに行くのかね?」
「具合が悪くて動けないようなので、今から医務室に行くところですよ。それがなにか問題でも?スネイプ先生」
挑発じみた言葉に私は息を小さく吐き出した。
そしてチラリとセブを見れば、彼は私の顔を覗き込んでから眉を寄せていた。
「顔色がとても悪いな。医務室に早く運ぶように」
「言われなくても行きますよ」
「Ms.フリート。具合が悪くて動けないようなら、無理せずに魔法薬学は休んでもいい。来れそうなら来るといい」
「は、はい……」
それだけを伝えるとセブは歩いて行ってしまった。
彼の背中を見送っていれば、フレッドは『おっどろいたあ』と目を見開かせている。
「スネイプって、あんなに優しい言葉もかけれるんだな。俺、驚いたなあ……明日は大雨かも」
「優しいところも、あるのよ……」
「俺は優しいところなんて、見たことないな」
フレッドはそう言いながら歩き出した。
そして医務室にたどり着くと、器用に片手でドアを開けてから中に入る。
するとマダム・ポンフリーが驚いた顔をしながら駆け寄ってきた。
「どうしました?」
「具合悪くて動けないようなんで連れてきましたー」