第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
暫くしてから、外から水がはねる音が聞こた。
「ハグリッド、何をしてるの?」
「水の音が聞こえたけれど、なにかしてるの?」
ハーマイオニーが帰ってきたので、私とハリーが訊ねると彼女は外へと視線を向けてからジョッキを元に戻していた。
「水の入った樽に頭を突っ込んでたわ」
「酔いを覚ますつもりかしら……」
するとびしょ濡れになったハグリッドが、目を拭いから戻ってきた。
そして『さっぱりした』と言いながら、犬のように頭をブルブルと振るので私たちはびしょ濡れになったしまう。
「なた、会いにきてくれて、ありがとうよ。ほんとうに俺……」
ハグリッドは突然立ち止まった。
そしてハリーと私を見つめると、始めて私たちが居ることに気がついたような表情を浮かべる。
「おまえたち、いったい何しちゃる。えっ?」
突然のハグリッドの大声に、私たちは思わず飛び上がってしまった。
「ハリー、アリアネ、暗くなってからうろうろしちゃいかん!おまえさんたち!2人とも!ハリーとアリアネを出しちゃいかん!」
「え、ちょ、ハグリッド!?」
ハグリッドは私とハリーと腕を掴むとドアまで引っ張っていった。
「来るんだ!俺が学校まで送っていく。もう二度と、暗くなってから歩いて俺に会いに来たりするんじゃねえ。俺にはそんな価値はねえ」
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その日の朝は最悪だった。
朝起きたら腹痛が酷くて、嫌な予感がしたら生理が来ていたのである。
「お腹痛い……」
「アリアネ、医務室に行きましょう。顔色が悪すぎるわ」
「うん……」
今日の午後からは『闇の魔術に対する防衛術』があったのにと思いながら、ハーマイオニーに支えられながらベッドから降りた。
だけど腹痛が酷すぎるのと目眩などがして、ふらふらとしてしまう。
途中でパーバディも支えてくれて、やっとのことで階段を降りたけれどそこからが問題。
私は目眩と吐き気で全然動けずに、一度談話室の椅子に座り込んだ。
「どうしよう、マダム・ポンフリーを呼んだほうがいいのかしら……」
「そうした方がいいかしら……。アリアネ、ちょっとだけ待てる?」
返事する余裕もなくて私は小さく頷いた時だった。
「どうしたんだ?アリアネ」
「あら、えっと……」
「フレッドさ、ハーマイオニー。で、どうしたんだい?」