第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
夕食時間。
私たちはハグリッドが心配で急いで大広間へと向かったけれど、そこにはハグリッドの姿はなかった。
「ハグリッドをクビにしたりしないわよね?」
ハーマイオニーは夕食を手に付けずに心配そうにしていた。
「そんなことしないといいけど」
「マルフォイが悪いのよ。それでハグリッドがクビになんてなった、理不尽だわ」
私はステーキ・キドニー・パイを齧りながら、スリザリン寮の方に視線をやった。
マルフォイの姿はないけれど、クラッブとゴイルが何かを話しているのが見える。
きっとろくな話はしていないだろうと思いながら、かぼちゃジュースを飲んで、パイを流し込んだ。
「まあね、休み明けの初日としちゃ、なかなか波乱に富んだ1日だったと言えなくもないよな」
夕食を終えた私たちはグリフィンドール塔に戻って、マクゴナガル先生から出された宿題をしていた。
だけど途中で中断しては、窓の外を眺めてハグリッドの小屋がある方を見る。
「ハグリッドの小屋に灯りが見える」
「本当だわ……」
ロンが腕時計を見てから、窓の方へと視線を向けた。
「急げば、ハグリッドに会いに行けるかもしれない。まだ時間も早いし……」
「それはどうかしら」
ちらりとハーマイオニーは私とハリーを見た。
「僕とアリアネは、校内を歩くのは許されてるんだ。シリウス・ブラックは、ここではまだ吸魂鬼を出し抜いてはいだろ?」
「それにホグワーツなのよ。ダンブルドアがいるから大丈夫の。シリウス・ブラックは来やしないわ」
私たちは急いで宿題を片付けてから肖像画から抜け出した。
外出をしていいのかとは思ったけれども、やはりハグリッドが気になってしかたない。
芝生を歩き出してから、私たちはハグリッドの小屋に辿り着いてからドアをノックをする。
するとドアは開かなかったけれど『入ってくれ』とハグリッドの声がした。
「こんばんは、ハグリッド」
ドアを開いて中に入れば、ハグリッドはお酒を煽っていた。
小屋の中はお酒の匂いが充満していて、少し顔を顰めてしまう。
そんな中でハグリッドはバケツぐらいの大きさのジョッキを前にしていて、彼の目は焦点が合っていない目で私たちを見てきた。
「こいつぁ新記録だ。1日しかもたねえ先生なんざ、これまで居なかったろう」
「ハグリッド、まさか、クビになったんじゃ!」