第2章 授業と決闘【賢者の石】
他の人はしてくれない、育ての親からは聞いた事のない両親の話をたくさんしてくれた。
そこから私はセブに凄く懐いて、彼が何時も真っ黒な格好をしていたから『鴉さん』と呼ぶように。
そして、彼は私の初恋相手。
いつの間にか私に両親の話をしてくれて、不器用に優しく私の頭を撫でてくれる彼に恋をしたのだ。
恋をしたのは何時だろう·····9歳の頃に自覚したけれど、その前からかもしれない。
(ウィーズリー家に預けられた後でも、彼は夜にこっそりと会いに来てくれたんだよね。でも、ウィーズリー家の皆には秘密だって)
だから、秘密に彼と会ってお話をしたり、こっそり家からお菓子やお茶を持ってきて秘密のお茶会もした。
「でも私、まさかセブがホグワーツの講師なんて知らなかったわ。教えてくれたら良かったのに」
「教えずとも、知ることになるから教えなかった」
「酷いわ、それでも教えてくれたら良かったのに」
頬を膨らませながら不貞腐れていると、セブは鼻で笑いながらも私の頭を相変わらず不器用に撫でてくれる。
この手が私は大好きだ。
「へへ·····」
「お前ぐらいだ。吾輩に撫でられて喜ぶのは」
「セブの手、好きよ」
「そうか。それより、この学校で吾輩の事は名前で呼ばないように。『スネイプ先生』と呼びなさい。Ms.フリート」
「はーい。でも、二人の時はいつもの様に呼んでもいいでしょう?」
「二人の時だけは、許可しよう」
ため息をついたセブは、瞳を閉じながらもう一度私の頭を少し撫でる。
「次の授業に遅れるぞ、アリアネ。早く行きなさい」
「はーい。魔法薬学の授業、楽しみにしてますね。スネイプ先生」
「早く行け」
「はーい!」
追い払うような形で手を振る彼に、私は相変わらず無愛想だと笑いながらも次のクラスへと急いだ。
だけど、闇の魔術に対する防衛術の講師であるクィレル先生の授業はちょっと肩すかし。
教室は何故かニンニクの匂いが強烈。
噂ではルーマニアで出会った吸血鬼を寄せ付けない為らしく、いつ襲われるか分からずにビクビクしているとか。
なんだか彼の話は凄くつまらなかった、楽しみにしていた授業なのに。
「期待はずれだったわ·····」
「アリアネ、凄く落ち込んでいるね」
「仕方ないわ。アリアネ、一番楽しみにしていた授業だったものね。期待はずれ過ぎてちょっと驚いたわ」