第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
マルフォイは鼻先で笑いながら、みんなに聞こえるように大きな声で話し出した。
「お……俺はこいつらが愉快な奴らだと思ったんだが」
「ああ、恐ろしく愉快ですよ!僕たちの手を噛み切ろうとくる本を持たせるなんて、まったくユーモアたっぷりだ!」
「黙れ、マルフォイ」
「黙りなさい、馬鹿マルフォイ」
じろりと私とハリーはマルフォイを睨みながら、静かにそう言った。
「えーと、そんじゃ。そんで……えーと、教科書はある、と。そいで……えーと、こんだぁ、魔法生物が必要だ。ウン。そんじゃ、俺が連れてくる。待っとれよ……」
ハグリッドはそう言いながら、森へと入ってしまう。
最初の授業だから成功させてあげたいと思いながら、彼の後ろ姿を見送った。
「まったく、この学校はどうなってるんだろうねぇ。あのウドの大木が教えるなんて、父上に申し上げたら、卒倒なさるだろうなぁ」
「黙れ、マルフォイ」
「ポッター、気をつけろ。吸魂鬼がおまえのすぐ後ろに」
私が杖を取り出そうとした時だった。
ラベンダーが甲高い声を出しながら、放牧場の向こう側を指さす。
そこには少し奇妙だが美しい生き物たちが足早でこちらに向かってくる姿があった。
胴体、後脚に尻尾は馬の姿だが、前脚と羽にそして頭部は巨大な鳥のような姿の生き物。
雪のように綺麗な姿にオレンジ色の瞳は、鷲によく似ている。
(綺麗な生き物……)
思わずそう思ってしまった。
生き物たちは分厚い皮の首輪をつけていて、長い鎖をハグリッドが持っている。
「ドウ、ドウ!」
ハグリッドが生き物たちに声をかけて、鎖を振るって私たちのいる柵のほうへと連れてくる。
そして鎖を柵に繋げてから声をかけてきた。
「ヒッポグリフだ!美しかろう、え?」
ハグリッドの言う通り、美しい生き物だ。
数十頭いるけれども、それぞれ色も違えば顔つきも違う。
「そんじゃ、もうちっと。こっちゃこいや」
誰も行きたがらないなか、私とハリーにロンとハーマイオニーは恐る恐ると柵に近づく。
「まず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らなければなんねえことは、こいつらは誇り高い。すぐ怒るぞ、ヒッポグリフは。絶対、侮辱してはなんねぇ。そんなことをしてみろ、それがおまえさんたちの最後の仕業になるかもしんねぇぞ」
私はヒッポグリフを眺めながらハグリッドの言葉に頷いてみせた。