第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
スリザリンと合同授業な事に肩を落としながらも、ハグリッドの小屋へと足を早める。
ハグリッドはモールスキンのオーバーを着込んで、足元にファングを従えていた。
「さあ、急げ。早く来いや!」
「ハグリッド、早く授業をしたくてソワソワしているみたいね」
「楽しみにしてたみたいだからね」
ハグリッドは早く授業をしたそうしソワソワ、ウズウズしていた。
そんな彼にクスクスと笑いながらも、ハグリッドの元へと向かう。
「今日はみんなにいいもんがあるぞ!凄い授業だぞ!みんな来たか?よーし。ついてこいや!」
そうしてハグリッドは歩き出して、私たちは彼に続いた。
暫く歩いていれば、ハグリッドは放牧場のような場所で足を止める。
「みんな、ここの柵の周りに集まれ!そーだ。ちゃんと見えるようにしろよ。さーて、イッチ番先にやるこたぁ、教科書を開くこった」
私たちは手に持っている『怪物的な怪物の本』を見下ろす。
みんな、『怪物的な怪物の本』をベルトで縛っていたり、袋に押し込んだり、クリップで挟んでいたりと様々である。
どうやって開けるべきか。
そう思っていれば、マルフォイが冷たい声でハグリッドに訊ねた。
「どうやって?」
「あぁ?」
「どうやって教科書を開けばいいんです?」
ハグリッドは皆を見てから少しガッカリしていた。
「だ、だーれも教科書を、まだ開けなんだのか?」
全員が頷いてみせた。
「おまえさんたち、撫ぜりゃーよかったんだ」
ハグリッドはハーマイオニーの本を取ると、本を縛り付けていたテープを剥がしていく。
本はハグリッドに噛み付こうとしたけれども、ハグリッドが背表紙をひと撫ですると、ハグリッドの手の中で大人しくなった。
「へえ、なるほど。こんなふうにするのね、知らなかったわ」
「撫ぜりゃー、平気だ。ほら、やってみろ」
私は教科書を縛っていたベルトを外してから、背表紙をひと撫でしてみた。
すると教科書は噛み付くことなく大人しくなってしまう。
「流石ね、ハグリッド。落ち着かせる方法を知っているなんて。やっぱり先生ね」
「そ、そうか?ありがとうな、アリアネ」
なんてハグリッドを褒めている時だった。
「ああ、僕たちって、みんな、なんて愚かだったんだろう!撫ぜりゃーよかったんだ!どうして思いつかなかったのかねえ!」