第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「『占い学』で優秀だったことが、お茶の葉の塊に死の予兆を読むふりをすることなんだったら、私、この学科といつまでお付き合いできるか自信がないわ!あの授業は『数占い』のクラスに比べたら、まったくのクズよ!」
「あ、ハーマイオニー!」
ハーマイオニーは私の呼びかけに反応せずに、カバンを掴んでから去っていった。
私はそんな彼女の背中を見送ってからロンを睨むと、彼は肩を竦めてみせる。
「あいつ、いったい何言ってんだよ!あいつ、また1度も『数占い』の授業に出てないんだぜ」
私はその言葉に肩を竦めてからかぼちゃジュースを飲み干した。
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「リーマス?」
お昼休み、私は『闇の魔術に対する防衛術』のクラスへと顔を覗かせて名付け親の名を呼んだ。
すると教室の奥から優しげに微笑むリーマスが顔を覗かせてから、手招きする。
「いらっしゃい。どうしたんだい?」
「顔を見に来たのよ。どう?ホグワーツでの先生生活は」
「悪くないよ、懐かしい気分にもなる」
リーマスはローブのポケットからチョコレートを取り出すと、それをパキッと音を鳴らして割った。
それから私へと『はい』と言って差し出すので、お礼を言ってから受け取る。
チョコレートを噛み砕くと甘くて優しい味が口の中に広がりだす。
それを楽しみながら椅子に腰掛けていれば、リーマスは優しげに微笑んでから私の頭を撫でた。
「子供扱いしないで」
「私からすればアリアネは子供だ。それに私の名付け子だからね、可愛がらせてほしいんだ。8年間合わなかった謝罪も兼ねて。そうだ、せっかくここに来たんだからアリアネの話を聞かせてもらおうかな。今日の授業はどうだった?」
「ん〜、今日、『占い学』があったけれど私とハリーが死の予言をされたわ」
私の言葉にリーマスは目を見開かせた。
「死の予言?」
「トレローニー先生が、私とハリーに死神犬(グリム)が取り憑いてるって。だから死ぬだろうって」
「それは……」
「でも、マクゴナガル先生が言ってたのよ。トレローニー先生は新しいクラスが来る度に死の予言をするって。でも今まで一度も死んだ人はいないらしいの。ただの予言だもの、死ぬわけがないのよ」
チョコレートを齧りながら、私はダイアゴン横丁で会った犬のことを思い出した。
あれはグリムだったのだろうかと。