第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
すると、ハーマイオニーは椅子から立ち上がるとトレローニー先生の椅子の後ろに回る。
「死神犬(グリム)に見えないと思うわ」
そんなハーマイオニーをトレローニー先生はじろりと睨んでいた。
「こんなことを言ってごめんあそばせ。あなたにはほとんどオーラが感じられませんのよ。未来の響きへの感受性というものがほとんどございませんわ」
「あら、それでも構いませんけど」
ハーマイオニーは本当に占いを信用していないというか、嫌いなのだろうかと思うぐらいの態度だった。
そう思っていれば、シェーマスが私とハリーのカップを首を左右に傾けて見る。
私もカップを見ればそこには黒い犬のような模様があった。
「こうやって見ると死神犬らしく見えるよ」
シェーマスはほとんど両目を閉じながら呟いた。
「でも、こっから見るとむしろロバに見えるな」
「僕とアリアネかま死ぬか死なないか、さっさと決めたらいいだろう!」
「ハリー……」
でも確かにそうだ。
さっさと決めてくれたらいいのにと思っているのと同時に、死ぬと予告されて怖い気持ちがあった。
「今日の授業はここまでにいたしましょう。そう……どうぞお片付けなさってね……」
皆は押し黙りながらカップを片付けていく。
だけど、チラチラと私とハリーを見ていてその視線がとても居心地悪くさせる。
その後、私とハリーとロンにハーマイオニーは無言で梯子を下りていくとマクゴナガル先生の『変身術』のクラスへと向かった。
だけど、マクゴナガル先生の教室を探し当てるのにずいぶんと時間をかけてしまった。
教室についてから、私とハリーは教室の1番後ろの席に腰掛けた。
すると皆の視線が集まってきて、その目は私とハリーが何時死ぬか分からないという目。
「別に死ぬって決まったわけじゃないのに。ねえ、ハリー」
「ああ、そうだよ」
だけど、皆は私たちをチラチラと見てくるせいでマクゴナガル先生の「動物もどき(アニメーガス)」についての話がほとんど耳に入らなかった。
先生はどうやら猫に変身したようだが、皆の視線から逃れる為に視線を下に向けていたので見ていなかった。
「まったく、今日はみんなどうしたんですか?別にかまいませんが、私の変身がクラスの拍手を浴びなかったのはこれが初めてです」
すると、ハーマイオニーが手を挙げた。