第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「でも、誰でもそんなこと知ってるわ」
するとハーマイオニーは聞こえよがしに囁き、トレローニー先生が彼女を睨んだ。
だけれどハーマイオニーはそれを気にせずに話し出す。
「だって、そうなんですもの。ハリーとアリアネと『例のあの人』のことはみんな知ってるわ」
「は、ハーマイオニー……?」
教師に対して珍しい口の利き方に私とハリーとロンは驚いていた。
セブは例外として、殆どの教師には敬意を払っているかのような態度をとっていると言うのに。
だけどトレローニー先生は反論することもなく、私とハリーのカップを覗いた。
「棍棒……攻撃。おな。まあ、2人ともこれは幸せなカップではありませんね。それにしても同じ模様が出るなんて珍しい。あなた達は深い絆に結ばれているようですねえ」
「ですって、ハリー」
「なんでだろう?幼なじみになるはずだったから?それとも育ち方が似てるから?」
私とハリーは首を傾げていた。
「髑髏……行く手に危険が。まあ、あなた達……」
トレローニー先生は私たちのカップを見ながら、無言になってしまう。
暫くすると、トレローニー先生は悲鳴をあげたので、周りにいた全員が驚いてしまった。
「おお、かわいそうな子たち。いいえ、言わないほうがよろしいわ。ええ、お聞きにならないでちょうだい……」
「先生、どういうことですか?」
トレローニー先生の反応に、ディーンがすぐ様に聞く。
そして皆は私たちの周りに集まってしてから、カップを見ようとトレローニー先生の元に行く。
「まあ、あなた達。あなた達になグリムが取り憑いています」
「なんですって?」
「グリム?」
グリムといえば、死神犬である。
墓場にいると言われている犬のことだが……と思っていればトレローニー先生は叫び続けた。
「グリム、あなた、死神犬ですよ!墓場に取り憑く巨大な亡霊犬です!可哀想な子たち。これは不吉な予兆、大凶の前兆。死の予告です!」
私とハリーは目を見開かせていた。
突然の死の予告をされてしまい、どうするべきなのだろうかと思いながら、あるものを思い出す。
ダイアゴン横丁で黒い大きな犬を見たことを。
もしかして、あの犬はグリムだったのかしらと思いながら首を捻る。
でも普通の犬に見えたし、グリムじゃなかったかもしれないと悩み続けた。