第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「はじめにお断りしておきましょう。『眼力』の備わっていない方には、あたくしがお教え出来ることはほとんどありませんのよ。この学問てまは、書物はあるところまでしか教えてくれませんの……」
彼女の言葉に、私とハリーとロンは同時にハーマイオニーをチラリと見る。
ハーマイオニーは書物が役に立たない事に驚いているようで、目を見開かせていた。
「いかに優れた魔法使いや魔女たりとも、派手な音や匂いに優れ、雲隠れ術に長けていても、未来の神秘の帳を見透かすことはできません。かぎられたものだけに与えられる、『天分』とも言えましょう。あなた、そこの男の子」
トレローニー先生はネビルに声をかけた。
「あなたのおばあさまはお元気?」
「元気だと思います」
「あたくしが貴方の立場だったら、そんなに自信ありげな言い方はできませんことよ」
その言葉にネビルは息を飲んでいた。
私はという、何が言いたいんだろうと首を捻るばかり。
「1年間、占いの基本的な方法をお勉強いたしましょう。今学期はお茶の葉を読むことに専念いたします。来学期は手相学に進みましょう。ところで、あなた」
トレローニー先生はパーバディに声をかけた。
するとパーバディはどうしたのだろうと、少し不安げに首を傾げる。
そんな彼女に先生は忠告をした。
「赤毛の男子にはお気をつけあそばせ」
パーバディはロンから離れて、私は思わず笑ってしまった。
するとロンは私をジロリと睨んできたが、それを気にせずにいた。
「夏の学期には、水晶玉に進みましょう。ただし、炎の呪いを乗り切れたらでございますよ。つまり、不幸なことに、2月にこのクラスは性質の悪い流感で中断されることになり、あたくし自身声が出なくなりますの。イースターのころ、クラスの誰かと永久にお別れすることになりますわ」
永久とはどういうことなのだろうか。
誰もがそう思っていたけへど、トレローニー先生はそれを気にせずにラベンダーに声をかけた。
「あなた、よろしいかしら。1番大きな銀のティーポットを取っていただけないこと?」
ラベンダーは直ぐに棚から巨大なポットを取ってから、トレローニー先生のテーブルに置いた。
「まあ、ありがとう。貴方の恐れていることですけど、10月16日の金曜日に起こりますよ」
トレローニー先生の予言に、ラベンダーは震えながら椅子に腰掛けていた。