第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「言ったでしょ。私、マクゴナガル先生と一緒に決めたの」
その時だった。
ハグリッドが、長い厚手木面のオーバーを着て大広間に入ってきた。
片手にはケナガイタチの死骸をぶら下げていて、ぐるぐるとそへを回している。
「元気か?」
教職員のテーブルの方に向かいながら、ハグリッドは真顔でそう聞いてきた。
「おまえさん達が俺のイッチ番最初の授業だ!昼食のすぐあとだぞ!5時起きして何だかんだ準備してたんだ……上手く行きゃいいが……俺が、先生……いやはや……」
ハグリッドは嬉しそうに笑いながら教職員のテーブルへと向かった。
「ご機嫌ねえ、ハグリッド」
「そうだね。何の準備をしてたんだろう?」
「さあ?」
ロンと話していれば、他の生徒たちが授業に向かい始めて大広間がどんどん空になっていく。
「僕たちも行ったほうがいい。ほら、『占い学』は北塔のてっぺんでやるんだ。着くのに10分はかかる……」
「急がなくちゃ!」
慌てて朝食を済ませた私たちは、フレッド達に別れを告げてから大広間から出た。
だけれど、北塔への道のりは凄く長くて遠くて、私たちは辛い思いをすることに……。
「どっか、ぜったい、近、道が、ある、はず、だ」
ロンは息を切らしながらそう言った。
私たちは7つ目の長い階段を登ってから、見たことの無い踊り場に出てしまったのである。
「こっちだと思うわ」
ハーマイオニーは右の方の人気のない通路を覗いた。
それに釣られて私も見るけれど、本当にこっちだろうかと首を捻る。
「そんなはずない。そっちは南だ。ほら、窓から湖がちょっぴり見える」
そんな中で私とハリーはとある絵を見ていた。
太った灰色葦毛の馬がのんびりと草地に現れ、無頓着に草を食べ始めている。
暫くすれば、ずんぐりとしている小さな騎士が鎧兜をガチャガチャと音を鳴らして馬を追いかけてきていた。
鎧の膝には草が着いているから、どうやら落馬したみたいだ。
「ヤーヤー!」
騎士が私たちを見て叫んだ。
「わが領地に侵入せし、不届きな輩は何者ぞ!もしや、わが落馬を嘲りに来るか?抜け、汝が刃を。いざ、犬ども!」
騎士は鞘を払ってから剣を抜く。
だけれど、剣は長すぎて振るった瞬間騎士はバランスを失って顔から草地につんのめった。
「大丈夫ですか?」
ハリーが心配そうに絵に近づいた。