第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「忘れろよ、ハリー。親父が何時だったかアズカバンに行かなきゃならなかった。フレッド覚えてるか?あんな酷い所は行ったことがないって、親父が言ってたよ。帰ってきた時にゃ、すっかり弱って、震えてたな……。やつらは幸福ってものをその場から吸い持ってしまうんだ。吸魂鬼ってやつは。あそこじゃ、囚人はだいたい気が狂っちまう」
「ま、俺たちのクィディッチ第1戦のあとでマルフォイがどのくらい幸せでいられるか、拝見しようじゃないか」
フレッドはニヤリと笑みを浮かべた。
「グリフィンドール対スリザリン。シーズン開幕の1戦だ。覚えてるか?」
「ああ、ハリーにぼろ負けしたマルフォイね。私は見られなかったけれど、話を聞いた時は嬉しかったわ」
あの時、私は風邪をひいたせいでクィディッチの試合を見に行けなかった。
でもマルフォイがぼろ負けしたという話を聞いて、凄く気分が良くなったのを覚えている。
今、思い出しても気分がいい。
そう思いながら焼きトマトを1口サイズに切り分けてから口へと放り込む。
そしてチラリと時間割を調べているハーマイオニーへと視線を向けた。
「わあ、うれしい。今日から新しい学科がもう始まるわ」
「ねえ、ハーマイオニー。君の時間割、メチャクチャじゃないか。ほら、1日に10科目もあるぜ。そんなに時間かまあるわけないよね」
「なんとかなるわ。マクゴナガル先生と一緒にちゃんと決めたんだから」
「でも、ほら。この日の午前中、わかるか?9時、『占い学』。そして、その下だ。9時、『マグル学』。それからー」
ロンは身を乗り出してから、時間割を見る。
「おいおい。その下に、『数占い学』、9時ときたもんだ。そひゃ、君が優秀なのは知ってるよ、ハーマイオニー。だけど、そこまで優秀な人間がいるわけないだろ。3つの授業にいっぺんにどうやって出席するんだ?」
「バカ言わないで。1度に3つのクラスに出るわけないでしょ」
「じゃ、どうなんだ」
「ママレード取ってくれない」
「はい、どうぞ、ハーマイオニー」
にしても、本当にハーマイオニーの時間割はギチギチになっている。
同じ時間に複数の授業にどうやって出るというのだろうかと首を捻った。
「だけど」
「ねえ、ロン。私の時間割がちょっと詰まってるからって、あなたには関係ないでしょ?」
ピシャリとハーマイオニーが言った。