第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「吸魂鬼たちは学校の入口という入口を堅めておる。あの者たちがここにいるかぎり、はっきり言うておくが、誰も許可なしで学校を離れてはならんぞ。吸魂鬼は悪戯や変装に引っかかるような代物ではない。『透明マント』でさえムダじゃ」
ダンブルドアの瞳が一瞬、私とハリーを捉えたような気がした。
そして私とハリーは顔を見合せてから、ロンとも顔を見合わせる。
「言い訳やお願いを聞いてもらおうとさえも、吸魂鬼には生来できない相談じゃ。それじゃから、1人ひとりに注意しておく。あの者たいが皆に危害を加えるような口実を与えるでは無いぞ。男子、女子それぞれの新任の首席よ、頼みましたぞ。誰1人として吸魂鬼といざこざを起こすことのないよう気をつけるのじゃぞ」
その言葉に生徒たちは静まり返り、誰1人言葉も発さずに身動きもしなかった。
「楽しい話に移ろうかの。今学期からうらしいことに、新任の先生を2人、お迎えすることになった。まず、ルーピン先生。ありがたいことに、空席になっている『闇の魔術に対する防衛術』の担当をお引き受けくださった」
私はリーマスに対して大きな拍手をした。
ハリーたちやコンパートメントでリーマスと会った子達も大きな拍手をしてくれる。
(リーマスが『闇の魔術に対する防衛術』の担当になってくれて嬉しい。1年生の時の担当はアレだったし、2年の時は最悪だったけれど、まともな人が担当の教師になってくれてよかった)
なんて思いながら拍手をしていた。
すると、ロンが私とハリーの肩を叩いてから囁く。
「スネイプを見てみろよ」
「え?」
「……セブ」
セブの方を見れば、彼はリーマスを睨んでいた。
怒りとかじゃなくて何処か、彼を憎んでいる火のような睨みに私はたじろぐ。
「なんで……」
なんで、そんなにリーマスを睨んでいるのだろう。
そう思いながらふと、ある事を思い出した。
(そういえば、セブは絶対にリーマスやハリーのご両親の話はしなかった。話すのは絶対に私の両親の話だけ。リーマスと仲良かったのかと聞いた時すごく嫌そうな顔をしていたわ……)
確か、セブはリーマスと同い年のはず。
ホグワーツでは同級生だとセブが嫌そうな顔をしながら話していたが、仲は良くなかったのかもしれない。
(でも、あんな顔しなくても……仲が良くないじゃなくて仲が悪いのかしら)