第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
リーマスの言葉に、ハリーがチョコレートを齧る。
「あと10分でホグワーツに着く。ハリー、大丈夫かい?」
「はい」
到着してから皆の口数が減っていた。
その代わり、私は歩いていこうとするリーマスのローブを強く掴んで引っ張る。
「アリアネ?」
「ホグワーツではずっと会えるよね」
「……会えるさ。私はホグワーツで講師をするんだから顔を合わせる機会は増えるからね」
リーマスは私の頭を撫でた。
その撫で方は8年前から変わらなくて、私は目を細めながら撫でられる気持ちよさに身を委ねる。
するとリーマスは目を細めながら微笑んでから、頭を優しくポンポンッと叩く。
「さあ、もう行きなさい。ハリー達に置いていかれるよ」
「……うん」
「ホグワーツに着いて時間があれば、会いにおいで。その時に色々と話そう」
背中をリーマスに押されてから、ハリーたちの元に走って向かった。
「ルーピン先生とお話してたの?」
「そう。8年ぶりに会えたから色々話したくて」
「そりゃそうだよな。8年ぶりに名付け親と再会出来たんだから色々話したいことあるよなあ」
そこで会話が途切れた。
その時、懐かしい声が聞こえてきた。
「イッチ年生はこっちだ!」
ハグリッドの声で私たちは振り返る。
ビクビクしてしまっている1年生を、ハグリッドが手招きして呼んでいた。
するとハグリッドは私たちに気付いたのか、手を振りながら叫ぶ。
「4人とも元気かー?」
私たちは手を振り返してから微笑むが、ハグリッドと話す機会はなかった。
船に流されて、凸凹のぬかるんだ馬車道に出てから馬が居ない馬車に乗り込む。
馬車が門を渡る時、門の両脇の石柱のところに吸魂鬼が居ることに気が付いた。
それを見た時、私はゾクリと背筋を震わせる。
(怖い。見た目からして怖いけれど、あの纏っている雰囲気さえも怖い)
馬車がひと揺れしたから止まる。
私たちが馬車から降りた時、苛つく声が聞こえてきた。
「ポッター、気絶したんだって?ロングボトムは本当のことを行ってるのかな?本当に気絶なんかしたのかい?」
その声の主はやっぱりマルフォイ。
ハーマイオニーを押しのけながら、ハリーの目の前に立ちはだかったのである。
「失せろ、マルフォイ」
「ウィーズリー、君も気絶したのか?」