第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
コンパートメントから出たリーマスを私は追い掛けた。
するとリーマスは困ったように眉を避けてから微笑み、私の頭を撫でてくれる。
その撫で方は小さい頃から変わらなくて、でも少しリーマスは老けている気がした。
「大きくなったね、アリアネ。もう13歳か」
「そうよ。あなたが迎えに来ない間に13歳になったわ」
「それはごめん。事情が色々あってね……」
「あのことなら、私、気にしないって手紙にも書いたのに……。別に私は安全だと思っているのに」
私の言葉にリーマスは困ったようにまた笑った。
「それより、なんでホグワーツ特急に?」
「実は今年から私はホグワーツで教師になるんだよ、アリアネ」
「そうなの!?」
「ああ。『闇の魔術に対する防衛術』の教師だ」
その言葉に私は目を輝かせた。
ずっと会いたくてたまらなかった名付け親であり、育ての親であるリーマスがホグワーツで教師をする。
それはつまりずっとリーマスと居られるかもしれないといあことだ。
「嬉しいわ!じゃあ、リーマスとずっといられるのね!」
「アリアネぐらいだ。私とずっといられることに喜ぶのは」
「当たり前でしょう!私の大好きな名付け親であり育ての親の貴方といられるもの!」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。さあ、アリアネはコンパートメントに戻りなさい。私は運転士と話をしてくるから」
「分かったわ」
私の怒りはたちまちに消えていた。
そしてコンパートメントに戻れば、ハリーたちが私の顔を驚いた顔をしてみる。
「さっきまで怒ってたのに、嬉しそうにしてる」
「ねえ、アリアネ。あの人が貴方が話していた名付け親なのね?」
「そうよ。リーマス・ルーピン、私の名付け親で5歳まで育ててくれた育ての親でもあるわ。そして私の両親の親友なの」
そう言いながら椅子に腰掛けると、ハリーたちは驚いた顔を浮かべた。
「あの人がそうなんだ……。でも君、その名付け親を平手打ちするなんて……」
「迎えに来るって言ったのに8年間も迎えたに来なかったのよ!怒るのも当たり前よ!」
「それは申し訳ないと思っているよ、アリアネ。すまなかった」
リーマスの声が聞こえて、コンパートメントの外に視線を向ければ苦笑したリーマスが入ってきていた。
「おやおや、チョコレートに毒なんか入れてないよ」