第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
ハーマイオニーがそう聞いた瞬間だった。
「馬鹿リーマス!!」
私はそう叫んでから彼の頬を思いっきり平手打ちをした。
パーンと言う破裂したような音が響きわたり、その場にいた全員が目を丸くさせている。
「い、いたい……君は相変わらず、手が出るのが早いね……」
「馬鹿リーマス!馬鹿リーマス!!馬鹿馬鹿!!」
「いたい、痛い……痛いよ、アリアネ」
「なんで迎えに来なかったのよ!私、ずっと待ってたのに!」
「それはとても申し訳ないと思っているよ。いたい、いたい」
ボコボコと私はリーマスの体を殴った。
すると驚いていたハーマイオニーがはっとした表情になってから、私の腕を掴む。
「何してるのよアリアネ!先生を殴るなんて!」
「というか、知り合いなのかい?」
ハーマイオニーとロンは驚いた顔をしながら、私を羽交い締めにするように止める。
そんな彼らに私は怒りながらも叫んだ。
「知り合いとなにも!彼は、このリーマス・ルーピンは私の名付け親で育ての親なのよ!!」
「「「「ええ!?」」」」
全員の驚いた声がコンパートメント内に響き渡る。
そう、このリーマス・ルーピンは私の名付け親であり育ての親なのだ。
そして私の亡き両親の親友であり、私を5歳まで育ててくれた大好きな人。
なのに、8年間も私に会いに来ずに手紙だけのやり取りをしていた。
迎えに来ると言って8年間も迎えに来ずにいたのである。
怒って殴っても許して欲しいぐらいだ。
「本当に迎えに行かなかったのは申し訳ないと思っているよ。それについては後でちゃんと話すから。チョコレート、食べなさい。小さい頃から好きだったたよね君は」
そう言いながらリーマスは私の口にチョコレートを押し込むように入れた。
「この人がアリアネの名付け親……」
ロンは驚いたようにリーマスを見ていた。
するとハリーも驚いた顔をしながらも、リーマスからチョコレートを受け取ってから質問をする。
「あの、あれはなんだったのですか?」
「ディメンター、吸魂鬼だ。アズカバンの吸魂鬼の1人だ」
「ディメンター……」
チョコレートを食べ終えた私は、さっきのを思い出して身体を震わせた。
「食べなさい。元気になる。私は運転士と話してこなければ。失礼……」
「あ、ちょっと待って、リーマス!」