第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
ジニーは機嫌をかなり悪くしていた。
「そういえばジニー」
「なあに?」
「ハリーの事、好きなのよね?」
そう聞くとジニーの顔がだんだんと赤くなる。
それが可愛らしくて、ついクスクスと笑っていればジニーは軽く私を睨みつけた。
ハリーの見るジニーの目を見れば、恋していることぐらい直ぐに分かってしまう。
それぐらい彼女は分かりやすくて、凄く可愛らしい女の子。
「言わないでね、本人に」
「もちろん、言わないわ」
「……ハリーは素敵よ。怪我をしてでもあたしを助けてくれた。でも、あたしなんか彼に好きになってもらえないわ……」
「あら、そうとは限らないわよ」
「……そうかしら?そういうアリアネはハリーのこと好きなの?」
「え?」
「ハリーとよく、一緒にいるじゃない。距離も近い」
そう言われて私は目を丸くさせた。
「好きだけど、恋愛的な意味じゃないわよ?そうね、ハリーはなんだか弟みたいな存在だもの。ロンと同じよ」
「本当に?」
ジニーは私の目を真っ直ぐに見てきた。
その目を見ながら、私は軽く頷いて見せる。
「本当よ」
「……そう。じゃあ、アリアネは今好きな人いないの?気になる人とか」
「……気になる人」
そう言われて思い浮かぶのは、夢の中に出てくる『シリウス』のこと。
何度も夢に出てきては、優しい言葉をかけている彼が気になっていた。
「いるわ……気になる人」
だけど恋愛的な意味じゃない。
そう言おうとした時、コンパートメントの扉がガラッと開いてから私は肩を跳ねさせた。
驚いて扉の方を振り返れば、そこには目を見開かせているフレッドとジョージがいた。
「あら、フレッドとジョージ」
「どうしたの、フレッド。驚いた顔して」
「アリアネ、気になる人って誰なんだ?どこの寮のどいつ?」
フレッドは私に顔を近づけながらそう聞いてくる。
「気になるって言っても、恋愛的な意味じゃないわよ!?」
「……恋愛的な意味じゃない」
するとフレッドは安心したかのように息を吐き出した。
隣にいるジョージはけらけらと笑っていて、ジニーはため息を吐き出している。
「それよりアリアネ、今日はハリーたちと一緒じゃないんだな。何時も一緒なのに」
「空いてたコンパートメントに、一人既に人がいたのよ。だからジニーと一緒に乗ってるの。ネビルもいるけれど……あら?」