第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「ハリー、アリアネ。君たちは、ファッジが考えているより、何と言うか、ずっと肝が座っている。そのことは私も知っていた。君たちが怖がっていないのは、私としても、もちろん嬉しい。しかしだー」
「アーサー!」
おじさんの言葉を遮るように、モリーおばさんの声が飛んできた。
そちらへと視線を向ければ、モリーおばさんが皆を列車の中へと追い込んでいるのが見える。
「アーサー、何してらっしゃるの?もう出てしまいますよ!」
「モリー母さん。ハリーとアリアネはいま行くよ!」
そう返事をすれば、アーサーおじさんは私たちへと視線をもう一度向けてきた。
「いいかね、約束してくれ」
「僕たちが大人しく城の外に出ないってことですか?」
「それだけじゃない。ハリー、アリアネ、私に誓ってくれ。ブラックを探したりしないって」
「え?」
「探したりしない?」
汽車がポーッと音を鳴らす。
駅員は扉を次々と閉めていて、モリーおばさんがじれったそうにしている。
「ハリー、アリアネ、約束してくれ」
「僕たちを殺そうとしている人を、なんで僕たちの方から探したりするんです?」
「そうよ、アーサーおじさん。なんで私たちのほうから探したりするの?」
「誓ってくれ。君たちが何を聞こうと」
「アーサー、早く!」
汽車はゆっくりと動き始めた。
私たちは急いでドアまで走れば、ロンがドアをパッと開けてくれて、私たちは慌てて飛び乗る。
そして汽車を乗り込んでから、窓からアーサーおじさんとモリーおばさんに手を振った。
「君たちだけに話したいことがあるんだ」
汽車がスピードを上げ始めた時、ハリーはロンとハーマイオニーに声をかけた。
するとロンはジニーに『どっか行ってて』と言うと、ジニーは怒ってしまう。
「あら、ご挨拶ね」
「私もジニーと行くわ。ここのコンパートメントはいっぱいいっぱいだから。じゃあハリー、あとはお願いね」
「分かった。僕から2人に伝えておくよ」
「お願い」
私は3人に手を振ってから、ちらりとコンパートメントの中を見た。
(なんだか、見た事のある髪の毛の色だったわね。珍しいわけじゃないけど……なんだか懐かしさがある)
そう思いながらジニーを追いかけて、私はコンパートメントの中へと入った。
「もう!ロンは言い方を少し学ばないといけないわ!」
「確かに、あの言い方はないわね」