第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「ロンに見つけたよって言わなきゃ……」
「そうね。戻りましょう……」
私たちは何とも言えない雰囲気のまま、2階へと戻って行った。
途中、フレッドとジョージが踊り場に蹲り声を殺して笑っているのを発見。
どうやらパーシーのバッジを奪ったのは双子のようで、バッジには『首席』ではなく『石頭』といたずら書きされていた。
そして私たちはロンに『ネズミ栄養ドリンク』を渡してから、彼らの部屋を出た。
「ハリー……話があるの」
「僕もだよ。……部屋、来る?」
「うん」
ハリーの部屋に入ると、私たちはベッドに腰掛けた。
だけどすぐには話はせずに無言のまま、時折足音や騒がしい声が部屋に聞こえてくる。
「ファッジが、何で僕が魔法を使っても甘かったか理由が解けたよ。シリウス・ブラックが僕を狙っていたから無事なのを見てホッとして甘かったんだ」
「私も謎が解けたわ。今朝ね、私、魔法大臣と会ったの。そしたら何故かホッとされたの。私がシリウス・ブラックに襲われたりしていなかったからね」
「きっとそうだ。でもまさか、凶悪犯罪者が僕たちの命を狙っているなんて思わなかったよ」
私はハリーの言葉に頷いた。
そして、よく夢に出てくる『シリウス』について考えた。
夢に出てくる『シリウス』はとても優しい人で、優しい声だったのを薄らと覚えている。
夢の中の『シリウス』と凶悪犯罪者の『シリウス』は同一人物なのだろうか。
そう思いながら手のひらを握りしめた。
「シリウス・ブラックは。たった1つの呪いで13人殺したって書いてあったわよね……」
「うん。でも、きっとダンブルドアの元に……ホグワーツにいれば僕たちは安全だよ。そうと思うだろう、アリアネ」
「そうね、ダンブルドアの元にいれば……大丈夫よ」
きっと、大丈夫。
ヴォルデモートだって恐れる人が居る場所なのだから。
「……私、部屋に戻るわね。明日早く起きなきゃ」
「うん、そうだね。僕も寝なきゃ……お互い、気をつけようアリアネ」
「ええ、そうね。……おやすみなさい、ハリー」
「おやすみ、アリアネ」
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翌朝、私は少し寝不足だった。
シリウス・ブラックの事を考えていたら、なかなか寝付けなかったのである。
(夢のシリウスとシリウス・ブラックは何か関係があるのかしら)
そればかり考えていれば、寝るのが遅くなった。