第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
「看守たちが報告したそうだ。ブラックがこの所寝言を言って。いつも同じ寝言だ。『あいつはホグワーツにいる……あいつはホグワーツにいる』。ブラックはね、モリー、狂っている。ハリーとアリアネの死を望んでいるんだ。私の考えでは、奴はハリーを殺せば不老不死と言われているアリアネの血を捧げれば『例のあの人』の権力が戻ると思っているんだ。ハリーが『例のあの人』に引導を渡した夜、ブラックはすべてを失った。そして12年間、奴はアズカバンの独房でその事だけを思い詰めていた」
沈黙が流れた。
私は思わず口を塞いでから、立ち尽くしてしまう。
私とハリーの死を望んでいる人が、アズカバンから脱獄していると聞いて心臓がバクバクと鳴っていた。
ちらりとハリーを見れば、彼も驚いたような何とも言えない表情を浮かべている。
「そうね、アーサー。あなたが正しいと思うことをなさらなければ。でも、アルバス・ダンブルドアのことをお忘れよ。ダンブルドアが校長をなさっているかぎり、ホグワーツではけっしてハリーとアリアネを傷つけることは出来ないと思います。ダンブルドアはこのことをすべてご存知なんでしょう?」
「もちろん知っていらっしゃる。アズカバンの看守たちを学校の入口付近に配備してもよいかどうか、我々役所としたも、校長にお伺いを立てなければならなかった。ダンブルドアはご不満であったが、同意した」
ということは、ホグワーツに行けばアズカバンの看守がいるのだろうかと思うとなんとも言えない気分になる。
「ご不満?ブラックを捕まえるために配備されるのに、どこがご不満なんですか?」
「ダンブルドアはアズカバンの看守たちがお嫌いなんだ」
アーサーおじさんの口調は凄く重苦しい。
「それを言うなら、私も嫌いだ……。しかしブラックのような魔法使いが相手では。いやな連中とも手を組まなければならんこともある」
「看守たちがハリーとアリアネを救ってくれたなら」
「そしたら、私はもう一言もあの連中の悪口は言わんよ。母さん、もう遅い。そろそろ休もうか……」
その言葉を聞いて、私たちは慌ててその場に姿を隠していれば、2人が階段を登って行ったのが聞こえた。
それから食堂に入れば、ネズミ栄養ドリンクは机の下に落ちていたのを見つけた。