第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
なんて話している時だった。
パーシーの怒鳴り声が聞こえてきて、私とハーマイオニーは眉を少し上げる。
続けてロンの怒鳴り声も聞こえてきて、喧嘩でもしているのだろうかと息を吐き出す。
「ハーマイオニー、私2人の様子を見てくるわ」
「そう?じゃあ私は部屋に戻ってるわ」
「ええ」
私は部屋を出ると、2人の声が聞こえる部屋へと向かった。
12号室の扉が半開きになっていて、怒鳴り声がそこから聞こえてくる。
喧嘩をするならもう少し静かにしてくれたらいいのに。
そう思っていれば、ばったりとハリーと出くわして彼も怒鳴り声でやってきたらしい。
「ここに、ベッドの脇にあったんだぞ。磨くのにはずしておいたんだから」
「いいか、僕は触ってないぞ」
「どうしたんだい?」
「どうしたのよ、2人とも」
「僕の首席バッジがなくなった」
パーシーは私とハリーに振り向くことなく答えた。
「スキャバーズのネズミ栄養ドリンクもないんだ。もしかしたらバーに忘れたかな」
「僕のバッジを見つけるまでは、どこにも行かせないぞ!」
やれやれと私は肩を竦めた。
「私、スキャバーズの栄養ドリンクを探してくるわ」
「じゃあ僕も」
すっかり明かりが消えてしまったバーの廊下まで来た時、言い争いをしている声が聞こえてきた。
こっちでも喧嘩なのかと、私とハリーは顔を見合わせてから歩き出す。
「モリーおばさんと、アーサーおじさんの声だわ」
「2人とも口喧嘩してるね……」
「どうしよう。戻る?」
そう言った時だった。
「……ハリーとアリアネに教えないなんてバカな話があるか。ハリーとアリアネには知る権利がある。アリアネには君が言うなと言うから教えなかったし、調べないように言った。だが知る権利はある。ファッジに何度もそう言ったんだが、ファッジは譲らないんだ。2人を子供扱いしている。ハリーとアリアネはもう13歳なんだ。それに」
「アーサー、ほんとのことを言ったら、あの子たちは怖がるだけです!ハリーとアリアネがあんなことを引きずったまま学校に戻る方がいいって、あなた、本気でそうおっしゃるの?とんでもないわ!知らない方がハリーとアリアネは幸せなのよ」
私たちの名前が聞こえてきて、ピタリと動きを止めた。
何故、私たちの事で口喧嘩をしているのかと不思議でたまらない。