第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
それにしても、何故ジークはスキャバーズが嫌いなのだろうか。
不思議に思いながらもぐったりとしているスキャバーズへと視線を投げた。
「すぐそこに『魔法動物ペットショップ』があるよ。ロンはスキャバーズ用になにかあるか探せるし、ハーマイオニーはふくろうが買える」
私たちはアイスクリームの代金を払うと、道路を渡ってから『魔法動物ペットショップ』に向かった。
ペットショップは少し狭くて、色んな動物があちこちにいる。
ロンはカウンターへと向かうと、先客がいなくなるのを待ってから店員に声をかけた。
「僕のネズミなんですが、エジプトから帰ってきてから、ちょっと元気が無いんです」
ロンは店員の魔女に説明をすると、魔女は『ふむ』と言いながらロンを見た。
「カウンターにバンと出してごらん」
私はちらりとペットショップの店の中から外を見る。
するとそこには、真っ黒な犬が立っていてこちらをジーと見ていた。
大きな真っ黒な犬は私とハリーを交互に見ていて、私が首を傾げればパタンと尻尾を振って地面を叩く。
首輪がない。
ということは飼い犬じゃないのかしらと思いながら、私はペットショップを出た。
そして黒犬に近づいてから、その場にしゃがみこむ。
「貴方、1人なの?」
「わふっ」
まるで返事をするように犬は吠える。
「そう、1人なのね。首輪も着いていないし、飼い犬じゃないのかしら……。野犬?それとも首輪が無いけれど飼い犬なのかしら」
考え込みながら、黒犬へと手を伸ばす。
すると黒犬は自分から頭を私の手のひらに擦り付けてきて、ふわふわとした毛並みが手に触れる。
「ふふ、柔らかいわね、貴方。でもちょっと汚れてるわね……土やら色んなものが着いているわ。どんな所を通ったのかしら」
私は黒犬に着いている葉っぱや土を払ってあげながら、頭を撫でてあげる。
「わふっ、わふ」
「貴方、いい子ね」
「わんっ」
「でも不思議ね……。私、貴方をどこかで見たことがある気がするわ」
不思議と黒犬とは何処かで会ったような、見たことがあるような気がした。
懐かしい感じがするけれど、今まで黒犬なんて見たことがないはず。
「……何処で、見たのかしら」
そう呟いた時だった。
ペットショップから騒がしい騒音が聞こえてきて、振り返る。
「何かしら」
振り返ってから黒犬へと視線を向けた。