第10章 名付け親【アズカバンの囚人】
ビルはそういうなりニッコリと微笑む。
「でも、気になる名前が……」
「これは残酷な事件の話だ。アリアネが読むにはまだ早すぎる」
「私、13なのよ。もう」
「まだ13だ。ほら、歯磨きしておいで」
最近、新聞を読ませて貰えない。
私は眉間に皺を寄せながらも、渋々と歯磨きをしに向かった。
普段から新聞を読む訳じゃないが、たまには読むけれど最近は読ませてもらっていない。
ビルに新聞を取られたり、アーサーおじさんが『もう捨ててしまった』と言ったり。
まるで私が何かを見るのを避けているかのよう。
「……シリウス・ブラック」
ポツリと名前を呼ぶと、何故か懐かしさが込み上げる。
「誰なんだろう」
そう呟きながら、私はエジプトでの日々を過ごした。
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「ええ!?ハリーが叔母を膨らませて、漏れ鍋にいる!?」
夏休み最後の日のこと。
アーサーおじさんからとんでもない事を聞かされた私とロンはギョッとした。
ダイアゴン横丁を歩きながらアーサーおじさんがハリーが叔母を魔法で膨らませたらしいと、教えてくれたのである。
「ああ。だが魔法省は特に何かをするわけじゃない。もしハリーを見つけたらいつもの様に過ごしなさい」
「分かったよ、パパ」
「はあい」
私たちはハーマイオニーと待ち合わせしてから教材を買ったりとした。
その後はフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリーム・バラーのテラスに腰掛けながらハリーについての話をしたりとした。
「何か、アイスクリームでも頼む?」
「僕、チョコレートがいい」
「私は何にしようかしら。それより、ハリーが叔母さんをふくまらせたって話、本当なの?」
「そうみたいよ。何か、理由があると思うんだけれど……」
なんて話をしている時だった。
「あれ、ハリーじゃないか?ハリー!ハリー!」
「あら、ハリーじゃない!ハリー!」
私とロンはハリーの姿を見つけた、ハーマイオニーとともにちぎれんばかりに手を振った。
「やっと会えた!」
ハリーが座ると、ロンはニコニコしながら話し出した。
「僕たち『漏れ鍋』に行ったりしたんだけど、もう出ちゃったって言われたんだ。フローリシュ・アンド・ブロッツにも行ってみたし、マダム・マルキンのところにも、それで」