第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
ニヒルな笑みを浮かべるアリアネにルシウスは、ウィリアスの面影を見た。
悪戯を考えている時、ろくな事を思っていない時に浮かべていた笑みにそっくりだと。
「バカな小娘がどうやって日記を手に入れたか、私がなんで知らなきゃならんのだ?」
「貴方が日記をジニーに与えたからです。フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で。ジニーの古い『変身術』の教科書を拾い上げて、その中に日記を滑り込ませた。そうでしょう?」
「貴方ならできるでしょう?綺麗に隠しながら日記を滑り込ませることなんて。ねえ?ルシウスさん」
ルシウスは蒼白になった両手をギュッと握りながら、光らくのを2人は見ていた。
動揺しているかのような仕草だが、ルシウスが認めるわけがない。
「何を証拠に」
「ああ、誰も証明は出来んじゃろう」
ダンブルドアはハリーとアリアネに微笑んだ。
「リドルが日記から消え去ってしまったいまとなっては。しかし、ルシウス、忠告しておこう。ヴォルデモート卿の昔の学用品をバラ撒くのはもうやめにすることじゃ。もし、またその類の物が、罪もない人の手に渡るようなことがたれば、誰よりもまずアーサー・ウィーズリーが、その入手先を、あなただと突き止めるじゃろう……」
ルシウスが一瞬立ちすくんだのをアリアネは見逃すことはなかった。
杖に手を伸ばしたくてたまらないように、右手はピクピクと動いている。
しかし、ルシウスは代わりにドビーの名を呼んだ。
「ドビー、帰るぞ!」
ルシウスは扉をあけて出ていくと、ドビーが慌てて傍に駆け寄った。
そしてドアの向こう側でドビーを蹴飛ばしたのか、アリアネたちの耳にドビーこ痛々しい叫び声が聞こえてくる。
「あの性悪!ドビーに当たってるんだわ!」
アリアネが飛び出そうとした時、ハリーは彼女の肩を掴んだ。
「待って、アリアネ。いい考えがあるから」
「え?」
「ダンブルドア先生。その日記をマルフォイさんにお返ししてもよろしいでしょうか?」
「よいとも、ハリー。ただし、急ぐが良い。宴会じゃ。忘れでないぞ」
「はい。行こう、アリアネ!」
「え、あ、え!?」
何をするつもりなのかアリアネは分からず、とりあえずとハリーについて行った。
するとハリーはソックスの片方を脱ぎ捨て、日記をその中に詰める。