第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
ハリーの額に触れた際に、蛇の言葉がわかるようになったことを。
あの時に力が共鳴してしまったのだろうかと、アリアネは自身の手を見つめる。
「それじゃ、僕とアリアネはスリザリンに入るべきなんだ。『組み分け帽子』が僕とアリアネの中にあるスリザリンの力を見抜いて、それで……」
「ハリー、よくお聞き。サラザール・スリザリンが自ら選び抜いた生徒は、スリザリンが誇りに思っていた様々な資質を備えていた。君とアリアネもまたそういう資質を持っておる。スリザリン自身の、稀に見る能力である蛇語……機知に富む才知……断固たる決意……やや規則を無視する傾向」
最後の言葉に2人はウッとなる。
そんな2人を見ながら、ダンブルドアは口ひげを悪戯っぽく震わせた。
「それでも『組み分け帽子』は君たちをグリフィンドールに入れた。君たちはその理由を知っておる。考えてごらん」
「帽子が僕をグリフィンドールに入れたのは、僕がスリザリンに入れないでって頼んだからにすぎないんだ……」
「私も……帽子にスリザリンは嫌だって……」
「そのとおり。それだからこそ、君たちがトム・リドルと違う者だという証拠になるんじゃ。ハリー、アリアネ、自分が本当に何者かを示すのは、持っている能力ではなく、自分がどのような選択をするかということなんじゃよ」
しばらく2人は動けなかった。
呆然としているようで、そんな2人にダンブルドアは言葉を続ける。
「ハリー、グリフィンドールに属するという証拠がほしいなら、ハリー、これをもっとよーく見てみるとよい」
ダンブルドアはデスクの上に手を伸ばして、あの銀色の剣をハリーへと手渡した。
剣の鍔のすぐ下には『ゴドリック・グリフィンドール』という名前が刻まれている。
「真のグリフィンドール生だけが、帽子から、思いもかけないこの剣を取り出して見せることが出来るのじゃよ、ハリー。それにアリアネ、もし君がグリフィンドール生ではないとなるのなら、友や大切な家族のような存在の子を命懸けで守ろうと救おうはせんじゃろう。その心が真のグリフィンドール生なのじゃよ」
「心が……」
「だがじゃ、アリアネ。君は少々、自分の命を軽んじる所があるのう。君はすぐに身を呈してでも守ろうとする傾向がある」
ハリーはその言葉に頷いた。
アリアネは確かに身を呈して守ろうとする。