第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
扉を潜り、3人は暗いトンネルを数分の間歩いた。
すると遠くからゆっくりと岩が崩れて動く音が聞こえてくる。
「ロン!ジニーは無事だ!ここにいるよ!」
向こう側から、ロンが感性をあげる声が聞こえた。
3人は次の角を曲がっていれば、崩れ落ちた岩の間にはロンが作ったのであろう隙間がある。
「ジニー!」
ロンは叫ぶと隙間から腕を突き出して、ジニーを引っ張った。
「生きてたのか!夢じゃないだろうな!いったい何があったんだ?でも、ジニー、もう大丈夫だよ。もう終わったんだよ、もう。あの鳥はどっから来たんだい?」
ロンはフォークスを指さした。
「ダンブルドアの鳥だ」
「フォークスっていうのよ」
「へえ。それより、どうしてハリーは剣なんか持ってるんだ?」
ロンは不思議そうにまじまじと、ハリーが手にしていた剣を見つめた。
「ここを出てから説明するよ」
「でも」
「あとにして」
ハリーは『秘密の部屋』が誰が開けたのかをまだ話はしなかった。
「ロックハートはどこ?」
「あっちのほうだ」
ニヤリと笑いながらロンはトンネルからパイプへと向かうと、顎でしゃくった。
「調子が悪くてね。来て見てごらん」
そこには鼻歌を歌っているロックハートがいた。
大人しく座っていているその姿にアリアネは眉間に皺を寄せてロンを見る。
「どうなってるの?」
「記憶を失ってる。『忘却術』が逆噴射して、僕たちでなく自分にかかっちゃったんだ。自分が誰なのか、いまどこにいるのか、僕たちが誰なのか、ちんぷんかんぷんさ。ここに待ってるように言ったんだ。この状態で独りで放っておくと、怪我したりして危ないからね」
ロックハートは人の良さそうな笑顔を浮かべながら、4人を見上げた。
「やあ、何だか変わったところだね。ここに住んでいるの?」
「なるほどね……」
ハリーが屈むと上に伸びる長く暗いパイプを見上げる。
「どうやって上まで戻るか、考えてた?」
ロンは首を横に振った。
するとフォークスがハリーとアリアネの後ろから飛んできてパタパタといわせる。
長い金色の尾羽を振っているフォークスに、2人はポカンとした。
「掴まれって言っているように見えるけど……」
「そうね、そう言っているように見えるわ」
「でも鳥が上がるまで引っ張り上げるには、君は重すぎるな」