第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
「ハリー、大丈夫!?」
「大丈夫だよ。それより見て、アリアネ」
ハリーは手帳を指さした。
日記の真ん中はバジリスクの牙が突き刺さり、毒のせいでジュウジュウと音を鳴らして焼け爛れて穴を残している。
「はい、ハリー。貴方の杖よ」
「ありがとう」
ハリーは組み分け帽子を拾い、アリアネはバジリスクの上顎を貫いた剣を引き抜く。
すると隅の方から呻く声が聞こえて、弾かれるように2人はジニーへと視線を向けた。
ジニーが動いていた。
ハリーとアリアネが慌てて駆け寄れば、ジニーは身を起こしてトロンとした目でハリーを見つめる。
ジニーはゆっくりとその視線をハリーの血まみれのローブに移し、アリアネの傷だらけの頬や怪我している手を見て、日記へと目を向けてから涙を溢れさせた。
「ハリー、アリアネ。あぁ、ハリー、あたし、朝食の時あなたに打ち明けようとしたの。でも、パーシーの前ではい、言えなかった。ハリー、アリアネ、あたしがやったの。でも、あたし、そ、そんなつもりじゃなかった。う、嘘じゃないわ、リ、リドルがやらせたの。あたしに乗り移ったの。そして、いったいどうやってあれをやっつけたの?あんなすごいものを?リドルはどこ?リドルが日記帳から出てきて、そのあとのことは、お、覚えてないわ」
喋るジニーにアリアネは涙を流した。
泣いてしまった彼女を見たジニーはギョッとしてから、オロオロとする。
そんな彼女をアリアネは抱き締めた。
「ああ、ジニー!ジニー!良かった……!」
「もう大丈夫だよ、ジニー。リドルはおしまいだ。見てごらん!リドル、それにバジリスクもだ。おいで、ジニー。早くここを出よう」
「そうね、早くこんな所から出ましょう」
アリアネがジニーの手を握った時、彼女は強ばった表情になった。
「あたし、退学になるわ!あたし、ビ、ビルがホグワーツに入ってからずっと、この学校に入るのを楽しみにしていたのに、も、もう退学になるんだわ。パパやママが、な、なんて言うかしら?」
「大丈夫よ、ジニー。大丈夫だから、ほら立って。行きましょう」
なんとかハリーとアリアネはジニーを促してから立ち上がらせた。
フォークスは入口の上を浮かぶように飛んで、3人を待っている。
「私、退学になっちゃうわ……」
「大丈夫よ……ジニー、大丈夫」