第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
その言葉に答えるように、スリザリンの顔が動き始めた。
その光景を見たハリーとアリアネは恐怖に打ちのめされながら、石像の口がだんだと広がるのを見る。
口は徐々に広がると大きな黒い穴になった。
何かが、石像の口の中で蠢いている。
それが何かなのかアリアネはすぐに分かった。
「……バジリスク」
彼女がその名前を口にすると、フォークスがハリーの肩から離れて飛び上がった。
するとバジリスクが石の床に落ちた音が聞こえ、床に振動が伝わる。
「ハリー!目を閉じて!」
「う、うん……!」
慌てて2人は目を閉ざした。
見れば石にされるのは分かっている、見てしまわなければなんとかなる。
「アイツらを殺せ」
リドルが蛇語でバジリスクに命じた。
するとバジリスクはゆっくりとゆっくりと、ハリーとアリアネに近づいてくる。
2人は目を閉じたまま手を伸ばして、手探りで横に走って逃げ始める。
だが目を閉じていたせいで、ハリーは転けてしまいアリアネも躓くと転けそうになる。
(目を閉じてるせいで、何も分からないわ……!!)
2人の真上にバジリスクがシューシューという音を鳴らしていた。
すると何か重たいものが2人にぶつかり、その衝撃にハリーとアリアネは壁に打ち付けられる。
「いっ……!」
「うっ、ぐっ……」
2人共が毒牙が刺さると覚悟した。
だが、その痛みは一向に来ず、代わりに何かのたうちまわっている音と柱を叩きつける音が聞こえてくる。
「な、に……?」
恐る恐ると2人は目を細めながら、何が起きているのかを確認した。
フォークスが、蛇の首周りを飛び回りながらバジリスクの目玉を嘴で突き刺していたのだ。
バジリスクは目を潰された痛み二のたうちまわっていて、その度にどす黒い血があちこちに溢れて流れ出している。
「違う!鳥にかまうな!ほっておけ!小童と小娘は後ろだ!臭いでわかるだろう!殺せ!」
リドルが叫ぶと、盲目となったバジリスクはふらふらしながら2人を探そうとしていた。
だがフォークスがまた攻撃を始めだし、そこからは血が溢れ出す。
「助けて。助けて。誰か、誰か!」
「……アクシオ!!」
アリアネはリドルに向かって叫ぶ。
すると、彼がポケットに収めていた彼女の杖がふわりと浮かぶとアリアネの手の中に収まった。
「なに……!?」