第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
「私も分かるわ。私を守ってくれたのは、ハリーと同じマグル生まれの母が守ってくれたからよ」
アリアネはなぜ、自分が生き残ったのか理由は知らない。
だけど、たまに悪夢を見る時に懐かしく悲しい声が守ってくれている声が聞こえた事があった。
きっとマグル生まれの母が守ってくれたのだと、そう思い続けていた。
「君が僕たちを殺すのを、僕たちの母達が食い止めたんだ。僕たちは本当の君を見たぞ。去年のことだ。落ちぶれた残骸だ。辛うじて生きている。君の力の成れの果てだ。君は逃げ隠れしている!醜い!汚らわしい!」
ハリーの言葉に徐々にリドルの顔が歪む。
そしてゾクリとしてしまうほどの、無理矢理作った笑みを浮かべる。
「そうか。母親が君たちを救う為に死んだ。なるほど。それは呪いに対する強力な反対呪文だ。わかったぞ。ハリー、結局君自身には特別なものは何も無いわけだ。実は何かあるのかと思っていたんだ。だがアリアネには特別なものがある。僕やハリーと違って、不老不死の血を持つという特別な力が……」
どこから羨むようにリドルはアリアネを見つめた。
「ハリー・ポッター、何しろ僕たちには不思議に似たところがある。君も気づいただろう。2人とも混血で、孤児で、マグルに育てられた。偉大なるスリザリン様自身以来、ホグワーツに入学した生徒の中で蛇語ん話せるのはたった3人だけだろう。ハリーら見た目もどこから似ている……。そうアリアネもどこから似ている。しかし、僕の手から逃れられたのは、結局幸運だったからにすぎないのか。それだけわかれば十分だ」
リドルが今にも杖を振り上げそうで、ハリーとアリアネは身を固くした。
「さて、ハリー、アリアネ。少し揉んでやろう。サラザール・スリザリンの継承者、ヴォルデモート卿の力と、有名なハリー・ポッターと、アリアネ・イリアス・フリートと、ダンブルドアが下さった精一杯の武器とを、お手合わせ願おうか」
ちらりとリドルはフォークスと組み分け帽子を見て嘲笑う。
リドルは一対の高い柱の間で立ち止まり、ずっと上の方に、半分暗闇に覆われているスリザリンの石像の顔を見上げる。
そして彼の口からはシューシューという音が漏れる。
「スリザリンよ。ホグワーツ四強の中で最強の者よ。我に話したまえ」