第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
音楽はだんだん大きくなり、怪しく背筋がゾクゾクするような旋律を奏でている。
その音楽にハリーとアリアネは背筋をゾクリとさせて、毛を逆立てた。
「なに、この音楽……」
アリアネが声を震わせた時、すぐ近くの柱の頂上から炎が燃え上がる。
白鳥程の大きかしの真紅の色をした鳥が、ドーム型の天井に不思議な旋律を奏でながら姿を現した。
黄金の羽を持ったその鳥は、爪にボロボロと何かを掴んでいた。
そしてハリーとアリアネの足元にそれを落とすと、ハリーの肩に止まる。
「不死鳥だな……」
リドルは鳥を見つめながら言葉を零した。
「フォークスか?」
「貴方、あのフォークスなの?」
アリアネはそっと鳥に触れた。
暖かな羽はじわりと彼女の指に熱を伝えて、その暖かさにアリアネは震えを止める。
「そして、それは」
リドルの目は、フォークスが落としたボロ布に向けられた。
「それは古い『組み分け帽子』だ」
ハリーとアリアネの足元に落ちていたのは、ボロボロの組み分け帽子だった。
ピクリとも動かない組み分け帽子を見て、リドルは突然笑い始める。
甲高く高笑いするその声は、今いる空間にやけに響いていた。
「ダンブルドアかま味方に送ってきたのはそんなものか!歌い鳥に古帽子じゃないか!ハリー・ポッター、アリアネ・イリアス・フリート、さぞかし心強いだろう?もう安心だと思うか?」
たしかに、一見は役に立つようには見えない。
だがダンブルドアは何か理由があってこれを送ってきたのだろうとアリアネはすぐに思った。
ふつふつとハリーとアリアネには勇気が湧き上がっていく。
「ハリー、アリアネ、本題に入ろうか。2回も、君の過去に、僕にとっては未来にだが、僕たちは出会った。そして2回とも僕は君を殺し損ねた。君たちはどうやって生き残った?フリート家は滅びると予言されたのにも関わらず、君はアリアネは1人だけ生き残った。なぜだい?すべて聞かせてもらおうか。長く話せば、君はそれだけ長く生きていられることになる」
ハリーは唐突に話し出した。
「君が僕たちを襲った時、どうして君が力を失ったのか、誰にもわからない。僕自身もわからない。でも、なぜ君が僕たちを殺せなかったなか、僕にはわかる。母が、僕を庇って死んだからだ。母は普通の、マグル生まれの母だ」