第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
「僕の在学中に『秘密の部屋』を再び開けるのは危険だと、僕にはわかっていた。しかし探索に費やした長い年月をむだにするつもりはない。日記を残して、16歳の自分をその中に保管しようと決心した。いつか、時が巡ってくれば、誰かに僕の足跡を追わせて、サラザール・スリザリンの、崇高な仕事を成し遂げることができるだろうと」
「君はそれを成し遂げていないじゃないか」
ハリーは勝ちこ誇っていた。
何せ、石にされた者たちは死んではいないのだから。
「今度は誰も死んでいない。猫1匹たりとも。あと数時間すればマンドレイク薬が出来上がり、石にされたものは、みんな無事、元に戻るんだ」
「まだ言ってなかったかな?『穢れた血』の連中を殺すことは、もう僕にとってはどうでもいいことだって。この数ヶ月間、僕の新しい狙いは、君たちだった」
ハリーとアリアネは目を見開かせて、リドルを見つめた。
狙いが自分たちだとは知らずに驚いていて、アリアネは息を飲み込む。
「それからしばらくして、僕の日記をまた開いて書き込んだのが、君ではなくジニーだった。僕はどんなに怒ったか。ジニーはハリー、君が日記を持っているのを見てパニック状態になった。君が日記の使い方を見つけたしまったら?僕が君に、ジニーの秘密を全部喋ってしまうかもしれない。もっと悪いことに、もし僕が君に、鶏を絞め殺した犯人を教えたらどうしよう?そこで、馬鹿な小娘は、君たちの寝室に誰もいなくなるのを見計らって、日記を取り戻しにいった」
リドルの笑みは嘲笑っているかのようだった。
ちらりと倒れているジニーへと視線を投げながら、笑みをこぼす。
「しかし、僕には自分が何をすべきかがわかっていた。君たちがスリザリンの継承者の足跡を確実に追跡していると、僕にははっきりとわかっていた。ジニーから君たちのことをいろいろ聞かされていから、どんなことをしてでも君たちは謎を解くだろうと僕にはわかっていた。君たちの仲良しの1人が襲われたのだからなおさらだ。それに、君たちが蛇語を話すと言うので、学校中大騒ぎだと、ジニーが教えてくれた……」
ちらりとアリアネはジニーを見た。
そんなことをしているとは知らずにいた。
それは全て自分がちゃんとジニーの傍にいなかったせいだろうかと自分を責める。
(私が、ちゃんと傍に居なかったから……)