第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
ハリーは怒りを顕にしながら言葉を続けた。
「それなのに、君はハグリッドをはめたんだ。そうだろう?僕は君が勘違いしただけだと思っていたのに……」
リドルはそんなハリーの言葉に甲高い笑い声を響かせた。
「ハリー、僕の言うことを信じるか、ハグリッドのを信じるか、2つ1つだった。アーマンド・ディペットじいさんが、それをどういうふうに取ったか、わかるだろう。1人はトム・リドルという、貧しいが優秀な生徒。孤児だが勇敢そのものの監督生で模範生。もう1人は、図体はまかりデカくて、ドジなハグリッド。1週間おきに問題を起こす生徒だ。狼人間の仔をベッドの下で育てようとしたり、こっそり抜け出して『禁じられた森』に行ってトロールと相撲を取ったり」
その言葉には軽蔑が込められていることにアリアネは気が付き、怒りが湧いた。
親友であり、ずっと見守り続けてくれたハグリッドを軽蔑するかのような声色に腹を立てる。
「しかし、あんまり計画どおりに運んだので、張本人の僕が驚いたことは認めるよ。誰か1人ぐらい、ハグリッドが『スリザリンの継承者』ではありえない。と気づくに違いないと思っていた。この僕でさえ、『秘密の部屋』について、出来る限りのことを探り出し、秘密の入口を発見するまでに5年もかかったんだ。……ハグリッドに、そんな脳みそがあるか!そんな力があるか!」
リドルは叫んだ。
だが未だにその口元には笑みが浮かんでいる。
「たった1人『変身術』のダンブルドア先生だけが、ハグリッドは無実だと考えたらしい。ハグリッドを学校に置き、家畜番、森番ときて訓練するようにディペットを説得した。そう、たぶんダンブルドアには察しがついていたんだ。他の先生方はみんな僕がお気に入りだったが、ダンブルドアだけは違っていたようだ」
「きっとダンブルドアは、君のことをとっくにお見通しだったんだ」
「ええ、そうよ。そうに違いないわ……ダンブルドアは貴方が元凶であることに気がついていたはずよ」
「そうだな。ハグリッドが退学になってから、ダンブルドアは、たしかに僕をしつこく監視するようになった」
リドルはのともなげに言う。
それが更にアリアネの怒りに徐々に火を付け出していた。
ハグリッドを退学に追い込んだことや、自分が行ったことを全部ハグリッドの責任にしたことやそれを反省していない事に。