第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
リドルは愕然としている2人を眺めながら、言葉を発しだした。
「親愛なるトム。あたし、記憶喪失になったみたい。ローブが鶏の羽だらけなのに、どうしてそうなったかわからないの。ねえ、トム、ハロウィーンの夜、自分が何をしたか覚えていないの。でも、猫が襲われて、あたしのローブの前にペンキがべっとりついていたの。ねえ、トム、パーシーがあたしの顔色がよくないって、なんだか様子がおかしいって、しょっちゅうそう言うの。きっとあたしを疑っているんだわ……。今日もまた1人襲われたのに、あたし、自分がどこにいたか覚えてないの。どうしたいいの?あたし、気が狂ったんじゃないかしら……。トム、きっとみんなを襲ってるのは、あたしなんだわ!」
ハリーは爪が手のひらに食い込むほどに拳を握りしめ、アリアネは唇を血が出るまで噛み締めていた。
そんな2人を愉快そうに見ながらリドルは言葉を続けていく。
「バカなジニーのチビが、日記を信用しなくなるまでに、ずいぶん時間がかかった。しかし、とうとう変だと疑い始め、捨てようとした。そこへ、ハリー、アリアネ、君たちが登場した。君たちが日記を見つけたんだ。僕は最高にうれしかったよ。こともあろうに、君たちが拾ってくれた。僕が会いたいと思っていた君たちが……」
「それじゃ、どうして僕たちに会いたかったんだ?」
「私たちに、そこまでして会いたかったのは何故なの?」
「そうだな。ジニーがハリーとアリアネ、君たちのことをいろいろ聞かせてくれたからね。君たちのすばらしい経歴をだ。だがアリアネ、君は名前を聞いた瞬間会いたかったさ」
瞳を細めて微笑むリドルは真っ直ぐにアリアネを見つめた。
その瞳にアリアネは背筋が凍る思いをして、咄嗟に目を逸らすが震えが収まらない。
そんな彼女に微笑むリドルに、ハリーは眉間に皺を寄せていた。
するとリドルはハリーの額の傷あたりを舐めるように見て、アリアネのことを貪るような見つめる。
「君たちのことをもっと知らなければ、出来れば会って話をしなければならはいと、僕にはわかっていた。だからまずハリーを信用させるため、あのウドの大木のハグリッドを捕まえた有名な場面を見せてやろうと決めた。残念ながらアリアネには見せてあげれなかったけどね」
「ハグリッドは僕たちの友達だ」