第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
リドルの瞳は真っ直ぐに、そして一瞬も目を離すことなくハリーとアリアネを見つめていた。
「11歳の小娘のたわいのない悩み事を聞いてあげるのは、全くうんざりだったよ。でも僕は辛抱強く返事を書いた。同情してあげたし、親切にもしてあげた。ジニーはもう夢中になった。『トム、あなたぐらい、あたしのことをわかってくれる人はいないわ……なんでも打ち明けられるこの日記があってどんなにうれしいか……まるでポケットの中に入れて運べる友達がいるみたい……』」
そう話終えると、リドルは声を上げながら笑い出す。
冷たくて甲高い笑い声に、ハリーとアリアネは背筋をゾクリとさせた。
「自分で言うのもどうかと思うけど、ハリー、アリアネ、僕は必要となれば、何時でも誰でも惹き付ける事ができた。だからジニーは、僕に心を打ち明けることで、自分の魂を僕に注ぎ込んだんだ。ジニーの魂、それこそ僕のほしいものだった。僕はジニーの心の深層に恐れ、暗い秘密を餌食にして、だんだん強くなった。おチビちゃんとは比較にならないぐらい強力になった。十分に力が満ちた時、僕の秘密をウィーズリーのチビに少しだけ与え、僕の魂をおチビちゃんに注ぎ込みはじめた……」
リドルの言葉に2人はまた困惑した。
何を言っているのかわからないという顔をしながら、ハリーがリドルに『それはどういうこと?』と喉をカラカラにさせながら訊ねる。
「まだ気づかないのかい?ハリー・ポッター、アリアネ・イリアス・フリート?」
「どういうことなの……」
「ジニー・ウィーズリーが『秘密の部屋』を開けた。学校の雄鶏を絞め殺したのも、壁に脅迫の文字を書きなぐったのも、ジニー。4人の『穢れた血』や『出来損ない(スクイブ)』の飼い猫に『スリザリンの蛇』を仕掛けたのもジニーだ」
「まさか」
「そんな事、ジニーが……ジニーがするわけないわ!」
アリアネの叫びにリドルは微笑みを深くさせた。
「いいや、ジニーがしたんだよ、アリアネ。ただし、ジニーは初めのうち、自分がやっている事をまったく自覚していなかった。おかげで、なかなか面白かった。しばらくして日記に何を書き始めたか、君たちに読ませてやりたかったよ……前よりずっと面白くなった……」