第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
ハリーとアリアネはロックハートの背中を杖で小突く。
「本当の何の役にも」
ロックハートはそう言いかけたが、ロンが背中を押したので最後まで言葉を聞くことはなかった。
彼は滑り落ちると姿が見えなくなり、ハリーが続くとアリアネもそれに続く。
パイプの中は果てしなく暗く、ヌルヌルとしている気がしてアリアネは顔を顰めた。
カーブを曲がる度にドスンという音が響き渡り、そして出口へと落ちる。
「いったあ……」
アリアネは尻餅を付いて落ちて、腰あたりを撫でていればハリーが手を差し出した。
「大丈夫かい?アリアネ」
「ちょっと痛かったわ。ありがとう、ハリー」
彼の手を掴んでアリアネは立ち上がると、ロンも降りてきた。
「学校の何キロもずーっと下の方に違いない」
「湖の下だよ。たぶん」
ヌメヌメする壁を3人は目を細めながら見回した。
「ルーモス(光よ)!」
ハリーが杖に向かって呟くと光がともる。
そしてアリアネも呪文を唱えてから、杖に光をともすと辺りを見渡した。
「行こう」
4人は真っ暗な道を歩き出した。
トンネルは真っ暗で、光も微弱なせいで目と鼻の先しか見えていない。
「みんな、いいかい。何かが動く気配を感じたら、すぐ目をつぶるんだ……」
トンネルはまるで墓場のように暗く静かだ。
するとハリーが何かを踏みつけてバリンと音が鳴り、アリアネがすぐに足元を照らした。
そこにはネズミの頭蓋骨があり、アリアネは顔を歪ませて辺りに小動物ぐらいの骨が散らばっていることに気がつく。
「ハリー、アリアネ、あそこに何かある……」
ロンの掠れた声が聞こえ、彼は2人はのローブを掴んだ。
彼の視線の先にはトンネルを塞ぐように、何か大きくて曲線を描いたものがある。
「眠っているかもしれない」
「……違うわ。蛇の抜け殻よ、これ……」
アリアネがそれを照らし出した。
そこには巨大な蛇の抜け殻が落ちていて、毒々しい緑色の6メートルはある大きさだった。
「なんてこった」
ロックハートは腰を抜かしたのか、座り込んでいたがロンが『立て』と厳しい口調で言う。
するとロックハートは立ち上がって、ロンが油断したすきに彼に飛びかかって床に殴り倒したのである。
「ロン!!」