第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
私とハリーはすぐに杖に手をかけた。
そしてロックハートが杖を振り上げる前に、私たちは声を揃えて叫んだ。
「「エクスペリアームス(武器よ去れ)!」」
私たちが呪文を唱えると、ロックハートは後ろへと吹き飛んでからトランクに足をすくわれ、その上に倒れる。
杖は飛び上がり、ロンがそれをキャッチすると窓から投げ捨てた。
「スネイプ先生にこの術を教えさせたのが、間違いでしたね」
「あの人の方が優秀なんですよ、ロックハート」
ハリーと私はロックハートに杖を向けながら、近づければ彼は呆れめたように言葉をこぼす。
「私に何をしろと言うのかね?『秘密の部屋』がどこにあるかも知らない。私には何も出来ない」
「約立たずね。別に貴方が知らなくても構わないわ」
「ああ、そうだ。僕たちはそのありかを知っていると思う。中に何がいるかも。さあ、行こう」
「立ちなさい、詐欺教師」
ロックハートに杖を向けながら私たちは部屋を出て、『嘆きのマートル』のトイレへと向かった。
そしてロックハートを先に入れてから、中に入ればマートルは1番奥の小部屋のトイレの水槽に座っていた。
「アラ、あんた達だったの。今度は何の用?」
「君が死んだ時の様子を聞きたいんだ」
ハリーの言葉に、マートルの表情が変わった。
何故か嬉しげにしていて、彼女は語り出した。
「オォォォォゥ、怖かったわ。まさにここだったの。この小部屋で死んだのよ。よく覚えてるわ。オリーブ・ホーンビーがわたしのメガネのことからかったものだから、ここに隠れたの。鍵をかけて泣いていたら、誰かが入ってきたわ。何か変なことを言ってた。外国語だった、と思うわ。とにかく、嫌だったのは、喋ってるのが男子だったこと。だから、出ていけ、男子トイレを使えって言うつもりで、鍵を開けて、そして、死んだの」
なるほど、と私はマートルの話を聞いてから頷いた。
「どうやって?」
「わからない。覚えてるのは大きな黄色い目玉が2つ。体全体がギュッと金縛りにあったみたいで、それからふーっと浮いて……そして、また戻ってきたの。だって、オリーブ・ホーンビーに取っ憑いてやるって固く決めてたから。あぁ、オリーブったら、私のメガネを笑ったことを後悔してたわ」
「その目玉、正確にいうと何処で見たの?」
「あのあたり」
マートルは小部屋の手洗い台のあたりを漠然としながら指さした。