第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
「僕たちの知っていることを教えてやるんだ。ロックハートはなんとかして『秘密の部屋』に入ろうとしているんだ。それがどこにあるか、僕たちの考えを話して、バジリスクがそこにいるって、教えてあげよう」
私たちは立ち上がると直ぐに肖像画の元へと駆け寄った。
数人の生徒が残っていたけれど、誰も私たちに声をかけることもなく止める気配もない。
今はそれが凄く有難くて、私たちは急いでロックハートの元に向かった。
ロックハートの部屋に辿り着けば、中からは何かやら物音が聞こえてくる。
慌ただしい足音が聞こえたけれど、ハリーがノックをすれば静かになった。
そしてわずかに扉が開くと、ロックハートが顔を覗かせる。
「あぁ……ポッター君……フリート君、ウィーズリー君……。私はいま、少々取り込み中なので、急いでくれると……」
「先生、僕たち、お知らせしたいことがあるんです」
「先生のお役に立つと思うんです」
「ですので、話を聞いてほしくて……」
「あー、いや、いまはあまり都合が……。つまり、いや、いいでしょう」
ロックハートは迷惑そうな顔をしながらも、ドアを開けたので私たちは中へと入った。
そして部屋の中に入った私たちは、疑問を抱くことになる。
(部屋が片付いているわ……。なんで?)
彼の部屋は片付けられていて、トランクにはローブがはみ出たように収められている。
「どこかへいらっしゃるのですか?」
「部屋を片付けてますけど」
「うー、あー、そう。緊急に呼び出されて……しかたなく……行かなければ……」
「僕の妹はどうなるんですか?」
「ジニーを助けてくれるんじゃないんですか!?」
私は思わず叫んでしまっていた。
「そう、そのことだが……まったく気の毒なことだ、助けてあげたいとは思っているんだが……誰よりも私が1番残念に思っているんだが……」
「『闇の魔術に対する防衛術』の先生じゃありませんか!こんな時にここから出ていけないでしょう!これだけの闇の魔術が起こっているというのに!」
ハリーが叫ぶと、ロックハートはしどろもどろと言葉をこぼしていく。
「いや、しかしですね……私がこの仕事を引き受けた時は……」
「仕事がなんですか!?」
「職務内容には何も……こんなことは予想だに……」
「先生、逃げ出すっておっしゃるんですか?」