第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
マクゴナガル先生の声が僅かに震えている。
「生徒が1人、怪物に連れ去られました。『秘密の部屋』そのものの中へです」
彼女の言葉に何人かの先生が悲鳴をあげた。
私も驚いて口を手で覆っていれば、セブが椅子の背をギュッと握りしめたのが目に入る。
「なぜそんなにはっきりと言えるのかな?」
「『スリザリンの継承者』がまだ伝言を書き残しました。最初に残された文字のすぐ下にです。『彼女の白骨は永遠に『秘密の部屋』に横たわるだろう』」
「誰ですか?どの子ですか?」
「ジニー・ウィーズリー」
マクゴナガル先生の言葉に、私とロンは崩れ落ちた。
もしかしたら聞き間違いなのかもしれないと思ったけれど、マクゴナガル先生は間違いなく『ジニー』の名前を言ったのだ。
その時、職員室の扉が開いた。
一瞬、ダンブルドアが帰ってきたのかと思ったけれどその期待は打ち砕かれる。
入ってきたのはロックハートだった。
「大変失礼しました。ついウトウトと、何か聞き逃してしまいましたかな?」
「なんと、適任者が」
セブが言葉を発した。
「まさに適任だ。ロックハート、女子学生が怪物に拉致された。『秘密の部屋』のところに連れ去られた。いよいよあなたの出番が来ましたぞ」
セブの言葉にロックハートの血の気が引いたのが見てわかった。
するとスプラウト先生が口を挟む。
「その通りだわ、ギルデロイ。昨晩でしたね、たしか『秘密の部屋』への入口がどこにあるか、とっくに知っているとおっしゃったのは?」
「私は、その、私は……」
「そうですとも。『部屋』の中に何がいるか知っていると、自信たっぷりに私に話しませんでしたか?」
フリットウィック先生も口を挟む。
「い、言いましたか?覚えていませんが……」
「吾輩は確かに覚えておりますぞ。ハグリッドが捕まる前に、自分が怪物と対決するチャンスがなかったのは、残念だとかおっしゃっいましたな。何もかも不手際だった、最初から、自分の好きなようにやらせてもらうべきだったとか?」
次々と話すセブにロックハートは石のように固まっていた。
「私は……何もそんなに……貴方の誤解では……」
「それではギルデロイ、あなたにお任せしましょう。今夜こそ絶好のチャンスでしょう。誰にもあなたの邪魔はしませんとも。お一人で怪物と取り組むことが出来ますよ。お望み通り、お好きなように」