第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
それから私たちは、息を殺しながら城の中へと戻って行った。
談話室に戻ってから、私たちはそれぞれ別れを告げてから寝室へと向かう。
「……疲れた」
静かで暗い寝室へと戻った私はそう言葉をこぼす。
そしてハーマイオニーがいつも眠っているベッドに、誰も眠っていないことに顔を歪める。
「アラゴグが言ってた怪物って、何なのかしら……」
古代の怪物と言っていたが、それはどんな怪物なのだろうかとベッドに上がりながら眉間に皺を寄せた。
そして50年前に襲われて殺された女の子はトイレで見つかったとアラゴグが言った。
トレイ、トイレ……と私は心の中で呟く。
何か引っかかると思いながら、私はある事を思い出して叫びそうになった。
「……嘆きのマートル……!」
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「僕たち、あのトイレに何度も入ってたんだぜ。その間、マートルはたった小部屋3つしか離れていなかったんだ。あの時なら聞けたのに、いまじゃなぁ……」
私たちは朝、食事をしながら『嘆きのマートル』について話していた。
やはりハリーも『嘆きのマートル』について気がついたらしく、朝起きて談話室に行けば興奮したように話しかけてきた。
私は最初『嘆きのマートル』に聞けばいいと思ったが、ハリーたちに反対された。
あそこは最初に犠牲者が出た場所だし、フィルチがウロウロしているから危ないと。
「フィルチ、邪魔よね……。ちょっと石になってくれたりしないかしら。襲ってくれたらいいのに」
「なんてことを言うんだ、アリアネ。気持ちはすごく分かるけれど」
だが、その気持ちは吹っ飛んでしまった。
何せマクゴナガル先生の『変身術』の授業で、1週間後に期末試験が始まると伝えられたから。
「試験?こんな時にまだ試験があるんですか?」
シェーマスが悲鳴をあげるように叫んだ。
「こんな時でさえ学校を閉鎖しないのは、皆さんが教育を受けるためです。ですから、試験はいつものように行います。皆さん、しっかり復習なさっていることと思いますが」
私は何時も復習はしているから大丈夫だけれど、ハリーとロンは大丈夫かしらと首を小さく捻った。
「ダンブルドア校長のお言いつけです。学校はできるだけ普通どおりにやっていきます。つまり、私が指摘するまでもありませんが、この1年間に、皆さんがどれだけ学んだかを確かめるということです」